中国の内憂外患

裸の王様”…2つの「中国神話」の崩壊産経新聞 2011年12月22日)


残りわずかの2011年は中国にとって、まさにの年となった。

内政の面で特に深刻なのは経済問題だ。今まで中国は通貨(元)の乱発をもって高い投資率を維持し高度成長を牽引(けんいん)してきたが、このようなゆがんだ成長戦略が生んだのはインフレの高進と不動産バブルの膨張だった。

そして昨年来、政府はインフレ抑制のために金融引き締め政策を実施してきた結果、全国の中小企業は深刻な経営難に陥ってしまい、企業の「倒産ラッシュ」が起きた。その一方、金融引き締めの中で不動産市場は急速に冷え込み、それが秋頃からの不動産価格の急落につながった。

こうした中で、中国物流購入連合会が発表した11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月比1.4ポイント低下して、好不況を判断する境目の50を下回る49となり、中国経済全体の減速傾向が鮮明となった。今後、不動産バブルの本格的崩壊に伴って経済の減速はよりいっそう進むだろうと思われる。

国家発展と改革委員会直属の「マクロ経済研究院」の副院長である王一鳴氏が最近、中国経済は今後「10年から20年の減速期に入る」と予測していることからも、今後長期間における中国経済の衰退は確実な趨勢(すうせい)であろう。とにかく、中国の鳴り物入りの高度成長はまさに今年をもって終焉(しゅうえん)を迎えた。

その一方、国際社会における中国の立場も実に苦しいものとなっている。11月に開かれた東アジアサミットを舞台に展開されていた米中両国の外交戦は結局、中国の完敗をもって幕を閉じた。南シナ海領有権問題に関し中国は当初から、東アジアサミットでこの問題を取り上げること自体に反対し、「当事国間で解決する問題だ」と米国の介入を強く反対してきた。

しかし、会議の全体を通してアメリカの積極的介入と圧倒的な外交攻勢の下で、参加国の大半が一致して中国の拡張への懸念から「南シナ海問題」を提起し「航海の自由と安全」を主張した。中国の思惑とは正反対に東アジアサミットはまさしく「南シナ海問題一色」の国際会議となってしまい、中国の孤立だけが目立った。

そして会議の開催を前後して米国が豪州北部に海兵隊の駐留を決めたり、イージス艦をタイに派遣したり、中国の「準同盟国」のミャンマーとの関係改善に乗り出したりして、中国の膨張を封じ込めるための包囲網の構築を着々と進めている。それに対し、中国政府は今でも本格的な反撃体制を整えることができず、アジア外交における劣勢を挽回できないままである。

世界最強国のアメリカの圧倒的な攻勢と、それを中軸にした東アジア諸国の団結の前では、中国がいかにも無力な存在であることが分かったであろう。

近年、中国の経済成長と国力の増大に従って、国際社会の一部がこのアジアの大国をアメリカと並ぶ「世界の超大国」に祭り上げて、木も草も「中国様」になびくような異様な雰囲気を作り出してきているが、このような神話としての中国像は、実はもう一つの「バブル」であることが今になって明確になった。

経済バブルの崩壊に伴って、今まで一世風靡(ふうび)した「中国高度成長」の神話の崩壊とともに「世界をリードする超大国の中国」の神話も一気に崩れ始めたのである。

そういう意味で2011年という年はまさに「中国神話」の崩壊の年である。「裸の王様」となった今後の中国が一体どうなっていくのか。国際社会にとっての大きな問題だ。

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