発送電分離のメリットとデメリット

発送電なぜ分離? 料金、参入、安定供給は?産経新聞 2012年1月18日)


政府が本格的に検討を始めた発送電分離は、既存電力会社の送電網を新規発電事業者にも開放することで、「新旧」電力会社間の自由競争を促す。既存電力会社が一体運用する現行制度に比べ、電気料金の引き下げやサービス向上が期待できる。太陽光発電事業者などの新規参入もしやすくなり、自然エネルギー導入が加速する可能性もある。しかし、先行する欧米では、過度なコスト削減競争が大規模停電を引き起こすなど、自由化が「魔法のつえ」とはいかないようだ。

「発電事業者の自由競争と消費者の自由な選択で、電力価格が自然に形成され、需給も合致するようになる」。政府の「電力改革と東京電力に関する閣僚会合」が昨年末に提示した論点整理は、理想の電力市場をこう定義する。その前提が、発送電分離だ。

既存電力会社が送電網を押さえる現行制度では、新規や独立系事業者の発電事業への参入が難しく、電気料金は電力会社の「言い値」で固定化されている。事実上、消費者に電力会社の選択権がなく、一般商品のように需給バランスによって価格が変動しないことから、供給過多でも価格は下がらない。逆に需給が逼迫(ひつぱく)しても価格が上がらないため、節電を促す効果も薄い。

発送電分離で自由競争を促せば、市場原理を通じて公正な形で価格形成や需給調整が行えるほか、新規参入業者の育成にもつながり「一石二鳥」(経産省幹部)というわけだ。

福島第1原発事故後、太陽光や風力発電などの導入機運も高まっており、送電網の開放で発電事業への参入のハードルが下がれば、再生可能エネルギーの普及を後押しするとの期待も広がる。

実際、1990年代から発送電分離を中心とした電力自由化を始めた米国では、これまでに3千を超える電力事業者が誕生し、産業の裾野が拡大。デンマークでは自由化後、風力発電が急速に普及しているという。

ただ、安定供給面などでの課題も多い。90年に発送電を分離した英国では、参入業者間で過度なコスト削減競争が続き、発電設備への投資を縮小した結果、設備不良による停電事故が頻発している。米国でも、カリフォルニアで2001年に事業者の破綻で大規模停電が発生し、自由化計画を撤回する州が相次いだ。

期待される電力料金の引き下げも、既存電力会社側は「これまでの成功例はほぼ皆無」と説明する。自由競争の下では、燃料費の変動が直接電気料金に転嫁されやすく、資源価格の高騰が続く中で、欧米の電力料金は長期的にみて上昇傾向にあるという理由からだ。

発送電分離は公平な競争を促すために必要だが、すべての問題を解決できるわけではない」(大和総研の真鍋裕子研究員)。議論は始まったばかりだが、自由化の課題も顕在化している。

まあ発送電分離をするならするで、発送電分離をした国の例を参考にして、いかにデメリットを少なくするかだな・・・。
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