中東情勢

緊迫のイラン情勢…イスラエルの怒りと日本に迫る危機ZAKZAK 2012年1月27日)


核兵器開発疑惑が深まるイランに対し、欧州連合(EU)が原油の禁輸制裁を決め、オバマ米大統領も一般教書演説で「武力行使を排除しない」との考えを強調した。欧米vsイランという対立構図のなか、単独でイラン空爆に踏み切る可能性が指摘されるのがイスラエルだ。決裂した米国とイスラエルの軍幹部による緊急協議と、日本経済を直撃する原油急騰の危機。大宅賞ジャーナリストの加藤昭氏による緊急リポート。

「イランが核開発を強行するなら、わが国は軍事作戦に踏み切り、彼らの核関連施設を徹底的に破壊するだろう」

イスラエル有力紙「イェディオット・アハロノット」のシュケル記者はこう語った。中東では、ホルムズ海峡の封鎖危機に続き、イスラエルによるイラク空爆が新たな火種として浮上している。

米軍のデンプシー統合参謀本部議長は18日、イスラエル入りし、同国のバラク防相ガンツ参謀総長らと、イランに軍事的圧力をかける「米・イスラエル合同軍事演習」について緊急協議した。

米軍側「イランはIAEA国際原子力機関)の調査団派遣を受け入れた。軍事演習は一時延期すべきだ。オバマ大統領も同意している」

イスラエル軍側「調査団受け入れはイランの時間稼ぎだ。軍事演習の延期には断固反対する。もし延期するなら、わが国は生存のために単独でもイランの核施設を空爆する」

緊急協議は、怒号も飛び交う緊迫したやり取りが続いたという。

イスラエルが深刻な危機感を強めているのには理由がある。パネッタ米国防長官は昨年12月、オバマ大統領に対し、「イランは2012年にも核保有国になる可能性が高い」という秘密報告書を提出した。

加えて、イランが昨年12月、イスラエルも開発に参加した米軍の無人偵察機「RQ−170センチネル」を無傷で捕獲したことも影響している。

同機は高度のステルス性を備え、レーダーでもほとんど捕捉できない。高度15キロを長時間飛行でき、電子光学カメラや赤外線カメラなどで収集したデータを、衛星を通じてリアルタイムで地上に送ることができる。

ロシア国防省参謀本部の関係者はいう。

「今後の戦争は、無人偵察機攻撃機が主流となる。このため、イスラエルは巨額資金を投入してステルス機の開発に取り組んできた。同機が反米・反イスラエルのイランに捕獲された。米軍の大失態に対し、イスラエルは怒り心頭に発しているようだ」

イスラエルは「小さな危機を許せば、新たなホロコースト(大量虐殺)につながる」という強い危機意識を持つ。イランが核保有国となり、ステルス攻撃機などを保有すれば、イスラエルの安全保障は大きく脅かされる。これらの事実を知ったネタニヤフ首相は、その場でバラク防相に対し、空爆チームの編成を指示したという。

米国とイスラエルの合同軍事演習は延期となったが、イスラエルの懸念通りの展開となっている。イランは米国のRQ−170返還要求を拒否したばかりか、中国やロシアの軍事顧問団に機体調査を許可する意向を示した。

イスラエルは1981年にイラクの核施設を空爆で破壊。2007年にもシリアの核関連施設を空爆している。22日の英紙「タイムズ」は、「イスラエルは米国政府に対し、作戦開始12時間前には情報を伝えると予告した」と報じた。もはや空爆寸前といえる状況だ。

第2次湾岸戦争が勃発すれば、現在、1バレル100ドル水準まで上昇している原油価格は、間違いなく1バレル200ドルを突破する。野田佳彦首相は「消費税増税」だけに突き進んでいるが、空爆実行後に慌てても遅い。

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