菅おろし沈静化と公債特例法案というアキレス腱

「倒閣」手詰まり感 小沢氏派も自民党も朝日新聞 2011年5月3日)


野党提出の内閣不信任案に、民主党の80人以上で同調して可決する――。小沢一郎元代表が描く倒閣シナリオは、第1次補正予算が成立し、大型連休が明けた途端に動き出すはずだった。ところが小沢氏の思うとおりに事態は進んでいない。

4月30日夜、都内の居酒屋。小沢氏は若手議員15人を前に座ると、あいさつもなしに酒を飲み始めた。福島第一原発の話題になると「安定しているというより安定的に放射能が漏れ続けているだけだ。決死隊みたいなものを送り込んで内部で止めることが必要だ」と語気を強めた。だが、側近議員がわざわざ中間派議員を呼んだのに、倒閣への決意は語らずじまい。「元気がない」と出席者の一人は感じた。

小沢氏に近い山岡賢次国会対策委員長が4月26日に開いた勉強会の出席者は衆参64人にとどまり、中間派はほとんど姿を見せなかった。中間派から「党内が混乱している印象を与えるだけ」との声が上がり、小沢グループの議員も「完全な失敗だ」と漏らした。

輿石東参院議員会長や鳩山由紀夫前首相ら「盟友」からも倒閣自粛を求められた。昨年6月の代表選で小沢氏が支援した樽床伸二国対委員長らも様子見を決め込む。

小沢氏の元秘書である石川知裕衆院議員の刑事裁判で業者が1億円の裏金を小沢氏側に渡したとする証言も飛び出し、世論の厳しい批判を覚悟して可決見込みの薄い不信任案に同調する議員が広がる気配はない。

とはいえ、いったん不信任案賛成へアクセルを踏んだ動きを止めれば、小沢グループ内の不満はたまるばかりだ。側近は「進むも地獄、引くも地獄」と語る。自民党が不信任案を提出した場合、小沢氏は離党覚悟で同調する決断を迫られる局面も予想される。

小沢氏の倒閣シナリオが失速し、自民党内には「内閣不信任案は通らない」との見方が広がった。大型連休明けに不信任案を提出して一挙に倒閣に突き進むという党内の一部で練られていた構想は、急速にしぼみつつある。

そもそも自民党内には震災復旧や原発事故の収束にメドがたたないうちに権力闘争を仕掛けることへの慎重論も強い。党幹部は「いまは政局より復旧」と語り、早期の内閣不信任案や首相問責決議案の提出は難しいとの考えだ。

このため党執行部は、6月22日の今国会会期末に向けて両案提出のタイミングを探る考えだが、菅内閣を解散か総辞職へ追い詰めることは難しい。「意外とこの政権は続く」(幹部)とあきらめにも似た空気も漂い始めている。谷垣禎一総裁は2日、記者団に内閣不信任案の提出について「連休中に思いを巡らせたい」と明言を避けた。

頼みの公明党も早期の解散・総選挙に慎重だ。山口那津男代表は2日の街頭演説で「一票の格差」が問題視されている衆院選挙制度に触れ、「衆参両院の任期は2年あまりある。違憲状態の制度ではなく、新しい選挙制度で次の選挙を迎えるよう努力をする」と述べた。新制度づくりには時間がかかるのは必至で、山口氏の発言は当面の「解散反対宣言」といっていい。

自民党内では「任期満了の総選挙で菅首相と戦えばいい」(幹事長経験者)とし、震災復興下で無理に倒閣に走る必要はないとの声も上がり始めた。

当面は通常国会の延長を求め、2次補正や特例公債法案への協力と引き換えに子ども手当などの民主党の看板政策の撤回や大幅修正を迫って存在感を示す戦略を探ることになりそうだ。

など本来なら菅内閣はとっくに総辞職のはず。

そうならず、菅おろしが沈静化気味なのは、

  • 今は政局より復旧というムード
  • 民主党に衆目の一致するポスト菅がいない
  • 民主党衆議院議席が多すぎ、ちょっとやそっとの造反では衆議院不信任可決ができない
  • 民主党反執行部の反菅グループに刑事被告人の小沢の影があり、野党の自民や公明が小沢と組みにくい

があるようです。

公債法案、終盤国会の焦点に中国新聞 2011年5月8日)


2011年度予算執行に不可欠な公債発行特例法案が宙に浮いたままだ。野党多数の参院で可決のめどは立っておらず、この状態が長引けば歳入不足となり、東日本大震災の復興施策を含め政府の活動全般が行き詰まりかねない。政府、民主党は連休明けの後半国会で野党に軟化を促す方針で、6月22日の会期末に向けた駆け引きは激しさを増しそうだ。

公債法案は税収不足の政府に財源として赤字国債の発行を認める内容で、約92兆円に上る11年度予算の4割超を担保する。通常なら当初予算とともに3月末に成立する。

今年は野党が公債法案の成立と引き換えに、菅直人首相の退陣か衆院解散を迫る戦略を探った。このため、5月に入っても衆院財務金融委員会に法案が留め置かれる異例の状態が続く。

ただ震災で情勢は流動化しつつある。自民、公明両党には復興より政局を優先しているとの批判を招く懸念が広がった。民主党は「復興財源の確保は急務だ。野党も最終的には公債法案に賛成せざるを得ない」(国対幹部)と強気だ。

民自公3党が11年度第1次補正予算の成立前に交わした4月29日の合意文書は、公債法案の扱いについて「各党で検討する」との表現にとどめ、成立への具体的な道筋を示さなかった。しかし民主党幹部は「検討項目として入ったことは大きな前進」と強調する。

政府、与党は従来、公債法案が6月までに成立しないと歳入欠陥が生じると主張してきた。今は「9月までは予算執行の工夫で乗り切れる」(民主党政調筋)との声も漏れる。自民党内の強硬派は依然、国会会期中に内閣不信任決議案を提出し菅首相を追い込むべきだという立場。民主党内では公債法案の処理を次期臨時国会まで先送りする「奇策」も取りざたされる。

どうやら、菅政権のアキレス腱は公債特例法案のようですね。
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