事故における経営者の刑事責任

司法の限界を露呈産経新聞 2012年1月25日)


JR福知山線脱線事故をめぐるJR西日本山崎正夫前社長の刑事責任追及は、平成21年7月の在宅起訴から2年半を経て、無罪判決に検察側が控訴を断念する形で決着した。11日の神戸地裁判決はJR西の組織的な問題にも言及したが、業務上過失致死傷罪は処罰対象を個人に限定しており、現在の刑事司法の限界が露呈した形だ。

公共交通機関の事故をめぐっては、現場の担当者が刑事責任を問われることはあっても、経営幹部が起訴されるのは極めて異例だ。事故の被害者らは山崎前社長の公判を通じ、事故を引き起こしたJR西の組織的責任が明らかになることも求めていたが、判決後、英国のように法人も処罰対象に加える法制度の整備が必要との声が上がっている。

一方で刑事裁判を通じ、被害者とJR西との溝が深まったとの指摘も少なくない。真相解明には捜査機関による捜査よりも、刑事責任追及を前提としない運輸安全委員会の事故調査のほうが適している面もある。

真相解明と責任追及のいずれを優先するのか。それとも双方を両立する方策はあるのか。あらためて重い課題が突きつけられたといえる。

被害者や遺族としては、事故において会社の責任者が痛い目を見る前例ができることで、事故防止の抑止力になると考える人は多いのはよくわかるが、正直言ってこれを刑事訴訟で有罪にするのは難しかっただろうな。
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