検審調査要請は政治権力の乱用
検審「調査」要請 これは政治権力の乱用だ(産経新聞 2012年4月25日)
民主党の小沢一郎元代表に近い議員らが中心となり、元代表の強制起訴を決めた検察審査会の実態を調査すべきだとして衆参両院で法務委員会の秘密会を開催するよう両院の議長に要請した。要請書には民主党はじめ衆参の与野党議員約140人が署名したという。 要請理由には、検審の議論が公開されていないことを挙げている。しかし、非公開なのは国民の中から選ばれた審査員が自由に議論し、独立性と中立性を保つためだ。正当な理由である。 要請は検察審査会法に定められたルールに異論を唱え、司法に干渉する口実でしかない。政治権力の乱用であり、両院議長は要請を認めるべきではない。 そもそも、26日には小沢氏に対する政治資金規正法違反事件の判決が東京地裁で言い渡される。直前のこの時期に、多数の国会議員がこの裁判に問題ありと調査を言い出すこと自体、判決に何らかの圧力をかけるねらいがあると映らないだろうか。 また要請書は、東京地検特捜部の検事により「捏造(ねつぞう)した捜査報告書」が提出されて「起訴議決の主たる理由になった」などと起訴議決は無効と主張している。 起訴議決が有効か無効かは、裁判に委ねられた争点だ。小沢氏の支持議員らが主導する形で法務委員会での調査などを行うとすれば、裁判に予断を与え、小沢氏の立場を立法府が後押しすることにもつながりかねない。 検察審査会による2度の「起訴相当」議決を経て弁護士が強制起訴する制度は、司法制度改革の一環として導入された。民主党も平成16年5月に成立した改正検察審査会法には賛成した。 両院議長に要請した中心メンバーにも、強制起訴議決の制度作りに賛成した議員がいる。国会が検察審査会に権限を与えたのに、制度の意義を自ら否定するような行動は不可解だ。 小沢氏は政治倫理審査会への出席を拒む理由として「司法府への介入を避けなければならない」と主張したこともある。今回の議員らの動きをどう説明するのか。 検察官役を務める指定弁護士の過重な負担など、強制起訴制度一般について問題点が指摘されているのは事実だ。 必要な見直しを検討するのは当然だが、今回の要請については、論外といわざるを得ない。 |