猫ひろし…

猫ひろし“失格”で守られた五輪の品格ZAKZAK 2012年5月15日)


カンボジア国籍を取得した猫ひろしが、もし同国代表としてマラソンで五輪に出たら心配なことがあった。タレントを使って五輪でさえバラエティー番組化してしまう日本のテレビ局が、ここぞとばかり芸人仲間をコースに動員してバカ騒ぎし、日本の恥をまきちらしかねなかったからだ。

それも国際陸連の“物言い”で、杞憂(きゆう)に終わった。国籍取得が昨年10月で、国際陸連は「代表として国際競技会に出られるのは今年10月から」と最終判断。五輪の良識は守られた。

国籍変更はクウェートなどオイルマネーのある中東諸国が、メダルのためにアフリカなどから選手を引っ張ってきて帰化させた。業を煮やした国際陸連が厳格な方針を打ち出したところに、想定外の猫がひっかかった。

ラソンのレベルが低いカンボジアなら代表になれる、と国籍を取得してまで五輪に出ようという卑しい考えで、まったく逆向からの国籍変更だったわけだ。裏で何があったかわからないが、カンボジアも代表にすれば都合のいいことでもあったのだろう。猫は国籍取得後もほとんど生活実態がなく、最初からうさん臭さが感じられた。

五輪参加標準記録を誰も破れない国は、男女1人ずついずれかの種目に出場できる。猫はその「特別枠」による内定だった。しかし、タイムは2時間30分も切れず女子より遅い。しかも同国の第一人者、ブンティンが先月のパリマラソンで2時間23分29秒をマークしている。何をか言わんやである。

しかし、テレビのワイドショーなどで、何もわからずに「カンボジア陸連は無責任で、踊らされた猫がかわいそう」というコメンテーターもいた。まさに噴飯ものだ。

この件に関して、聞き及ぶ範囲内で当初から正論を吐いていたアスリートは、カンボジアで市民マラソンを企画するなど同国の事情に詳しい五輪銀メダリストの有森裕子さん1人だったように思う。

猫が代表に内定したときの感想は、胸を打つものがあった。

「日本人に代表を譲る若い選手の心中を思うと悔しい。貧弱な練習環境の中で力をつけてきた選手に出てほしい」

さほど売れていなかったタレントとしては、日本中に名前が知れ当初の目的は達したろう。だからといって、五輪消滅でカンボジアに「ハイさよなら」ではスポーツマンシップを踏みにじり、人の道まで踏み外す。

「4年後は39歳になるが、体がもつならカンボジア人としてリオを狙う」と猫は語った。4年間カンボジアに住み、練習を続ける覚悟があるのかどうか。その点を厳しく問いたい。



人気ブログランキングへ