投票5種類騒動

投票5種類 「前代未聞」 悩む葛飾、世田谷、八王子選管

東京新聞 2012年11月15日 夕刊


総選挙が東京都知事選と同日選となることが決まって一夜明けた十五日、都内自治体の選挙管理委員会は、倍増した準備作業に追われた。中でも葛飾、世田谷の二区と八王子市では都議補選も加わり、職員は「投開票の作業予定を一から練り直しだ」と悲鳴を上げた。 (都政取材班)

「前代未聞の選挙。五種類の投票を経験する自治体なんてほとんどないのでは…」と嘆くのは、葛飾区選管の種井秀樹事務局長。知事選、都議補選に急きょ、衆院選小選挙区比例代表最高裁裁判官の国民審査が加わる。最大の悩みは投票箱の確保。五十五カ所の投票所に五個ずつ備えるが、一カ所あたり一〜二個足りず、不足分は約七十個に上る。

石原慎太郎前知事の突然の辞職で、開票所として区総合スポーツセンターを急きょおさえた。既に別のスポーツ団体が予約していたのを譲ってもらった。

「もともと都知事選と都議補選の二つの開票のつもりで場所を確保していた。五種類になると、作業もかなりぎゅうぎゅう詰めになる。作業のレイアウトも変えないと…」

掲示板も不足?

投票箱は公職選挙法の施行規則で、三重構造にすることやかぎを付けることなど、仕様が決まっている。別の箱では代用できない。

「よし来た、という感じです。準備は十分なので」。投票箱で全国トップのシェアを誇る「ムサシ」(東京都中央区)には、解散総選挙の見通しが伝わった十四日午後以降、各地の選管からの問い合わせが相次いだ。いつ選挙になってもよいように、春先から約二千個分の在庫を確保しているという。

一方、都選管ではポスターの掲示スペースも心配の種。市街地では、新たな場所を確保できるか分からない。知事選用の掲示板に二十五人分のポスターが張れるため、知事選の候補者数が少なければ同じ板の空きスペースを衆院選に回し、不足分は付け足すなど知恵を絞る。

知事選の啓発用横断幕やポスターは発注済みで印刷直前。総選挙の広報文も盛り込むのは断念した。選管の悩みは尽きない。

◆同日選まだまし

知事選、総選挙とも単独で行う場合の経費は各五十億円余。同日選なら、投開票所の賃料など重なる部分は削減できる。

また、過去三回の都知事選の投票率は44〜57%で衆院選より低い傾向がある。選管は、せわしい師走の選挙で低下が気掛かりだったが、同日選で上昇が期待できる。都選管の担当者は「都知事選と衆院選が一、二週間単位でずれるのが最悪だった。同日選はまだマシ」と話している。

知事選の告示は十一月二十九日、衆院選の公示は十二月四日、いずれの選挙も十六日に投開票となる見込み。