消せるボールペン

「消せるボールペン」のリスクは“消せる”か…自治体、使用禁止に躍起(産経新聞2014.5.3)


ゴムの摩擦熱で筆跡を消し、書き直せることが売りの「消せるボールペン」の公文書への使用を防ごうと自治体が神経をとがらせている。文書を書き換えて手当てを不正受給するなど不祥事が全国で相次いだためだ。公文書の改竄(かいざん)は刑事事件にも発展するため、各自治体は新人研修で注意を促したり、全部署に通知を出したりして周知を徹底。普及とともに現れたリスクを“消そう”と懸命だ。

公文書「改竄」の危機

「消せるボールペンという筆記具がありますが、当然、公文書には使わないように」。4月7日に行われた大阪市の新人職員研修。講師の文書担当職員は、こうクギを刺した。

公文書は行政機関などの職員が職務上作成して組織的に使う文書で、行政活動の記録だけに、公文書管理法で厳格な管理が義務づけられている。改竄は、有印公文書偽造罪などに問われる可能性もある。

同市は大阪府警で消せるボールペンを使った調書の書き換えが発覚した直後の平成24年8月、使用禁止に。文書担当の行政課は「書き換えられる筆記具で公文書を書いたら、市民への説明責任を全うできないことを継続的に職員に周知していく」と説明する。

堺市も4月30日、使用禁止を徹底する通知を全課に出した。

勤務時間、費用を水増し

茨城県土浦市は昨年9月、消せるボールペンで勤務表を改竄し計約70万円を不正受給したとして、消防本部総務課の30代の男性職員を懲戒免職にした。消防によると、23年4月に消防隊員から事務職に異動。宿直や休日出勤の時間外勤務手当がなくなったため、不正に手を染めた。消せるボールペンで勤務表を書き込み上司の決裁を受けた後、市人事課に持って行く途中で書き換えていたという。

三重県津市では昨年5月、学校給食の食材を調達する市学校給食協会の元臨時職員が、ペンの悪用でパンなどの費用を水増しし、約105万円をだまし取った詐欺容疑で逮捕された。

名古屋市では5局12部署でタクシーチケットなどにペンが使われていたことが発覚。改竄などの不正は確認されなかったが、監査委員は報告書でこう警鐘を鳴らした。「行政文書の重要性に対する意識が希薄化している」。

フランスが“発祥”

文具メーカー「パイロットコーポレーション」(東京)は18年、子供たちがボールペンでノートを書く文化があるフランスで消せるボールペンを発売。ヒットしたため19年から日本でも売り出し、25年末までに世界各国で約9億2千万本が売れた。同社の広報担当者は「不正が起きていることは残念。便利な筆記具なので適切に使ってほしい」と話している。

よく、悪知恵が働く人がいるなあ。