埋蔵電力は軽視すべきじゃないが、楽観視できるものでもない

埋蔵電力、真夏の夜の夢 首相の思いつきに現場困惑産経新聞 2011年7月23日)


脱原発」をぶち上げる一方で、今夏や今冬の電力供給不足懸念には「ピーク時の節電あるいは自家発電の活用などで十分対応できる」と言い切った菅直人首相。企業などが保有する自家発電の余剰電力を「埋蔵電力」と位置づけ“発掘”を指示したが、現時点で約160万キロワットにとどまることが事前調査で判明した。経済産業省は首相の指示によって再調査に乗り出したが、本来の工場用電力に使っていたり、電力系統につながっていないなどで大幅な積み増しは困難だ。首相の“幻想”による現場の困惑は増すばかりだ。

「九州にまで電力不足が及ぶとは想定していなかった。自家発でいかに自社生産を守るか。ただ、電力会社から要請があっても余力はない」。北九州市にある三菱化学黒崎事業所の幹部は頭を抱える。

 同工場はナイロン原料の生産中止に合わせ、5月21日に予定通り自家発1基を止めた。本来なら廃棄工程に入っているが、中部電力浜岡原発の停止や九州電力の“やらせメール”で定期検査終了後の原発再稼働にめどが立たなくなったことなどで、廃棄作業は中断した。

東京・東北電力管内だけでなく、関西にある企業も関西電力と政府による節電要請への対応で手いっぱいで、自家発を保有していても売電の余裕は少ない。関西電力が今夏に自家発から購入する積み増し電力は12万キロワット。八木誠社長は「これ以上を見込むのは非常に厳しい」とする。管内に自家発設備が多い東京電力も、自社供給力の3%にあたる160万キロワットを買い取るが、「電力使用制限令で企業も自家発への依存を高めており、これ以上は難しい」(藤本孝副社長)とみている。

もともと首相が埋蔵電力に対して「魅力的な言葉」と応じたのは、今月6日の参院予算委員会。だが、その後の答弁書によると、経産省は今月4日時点の推計として上積みできる電力供給力を報告していた。それによると、1万キロワット以上の火力発電設備を持つ事業者177社への聞き取り調査の結果、自家発による電力供給の積み上げの推計は約160万キロワットだった。

実は、沖縄を除く全国の自家発電設備は計3141カ所、出力にして約5368万キロワット(今年3月末現在)ある。ただ、電力会社への売電を事業としている卸供給設備を除けば約3440万キロワット。このうち約260万キロワットはすでに電力各社と売電契約を結んでいる。残る約3200万キロワットについては、本来の目的である自家使用に加え、設備を休廃止していたり送電線への系統接続がないなど、売電は事実上、不可能だ。

電力不足を受けて自家発設備の増強に動いている企業も多いが、設備新設には早くても半年程度かかるうえ、「売電するための送電系統に接続するコストは誰が負担するのか」(大手電機メーカー担当者)と憤る。

首相から再調査の指示を受けた経産省は、届け出義務のある1000キロワット以上の発電設備を持つ事業者にアンケートを実施しているが、作業は膨大なだけに「早くとりまとめたいが…」と疲れをにじませる。再調査により小規模の遊休設備が発掘される可能性はあるが、そうした設備を継続して動かすためには民間が自ら燃料調達や設備保守を行う必要があり、負担は大きい。

あるエネルギー大手首脳は「特別会計だって切り込んであれだけ。まして民間の電気など出るわけがない」とあきれ顔だ。埋蔵電力は、少なくとも今夏は“真夏の夜の夢”に終わりそうだ。

「埋蔵電力は軽視すべきじゃないが、楽観視できるものでもない」というのが私の持論ですが、やっぱりそうですか。

原発安全神話が無くなった後に「停電しない神話」を作るのは止めて欲しいですね。

それでも埋蔵電力で電力がまかなえるというのであれば、全ての自家発電を電力数と共に名指しで列挙すべきでしょう。
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