公務員・公務員

一律の「公務員たたき」はマイナスだ産経新聞 2011年8月14日)


ようやく菅直人首相の退陣が見えてきた。それにしてもはっきりとした時期を示さない引き延ばしには、国民の多くもあきれたことだろう。

古代ギリシャなら、「陶片追放」の名のもとに市民が陶器の破片に名前を刻んで気に入らぬ権力者を追放できた。日本でも鎌倉時代から徳川時代にかけて「主君押込(おしこめ)」という慣行があり、問題のある主君を家臣たちが監禁して権限を奪っていた。

現行の法律では不信任案の可決か本人の辞職を待つしかないが、重要問題が山積している日本丸のかじ取りを、間違った政治主導にまかせるわけにはいかない。

現在、国として早急に解決をしなければならぬ課題は極めて多い。福島第1原発事故で放出された放射性物質への対処をはじめ、被災者救済と今後の補償、復興財源の問題、電力の確保、円高や企業の海外流出防止、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への対応、沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題、北方領土などの領土問題、郵政改革法案の扱いなどである。

民主党政権になったとき、事務次官会議を廃止したり政務三役で省務を仕切ったり、鳴り物入りで「事業仕分け」をしたりしたが、結果は芳しくなかった。従来の官僚制度にメスを入れたつもりが、結果的には逆に仕切られてしまった感がある。

現在、国を実質的に動かしているのは、東大法学部卒を主体としたキャリア官僚である。成績優秀、人格温厚で調整能力もあるこのエリート集団には、すべての人に当てはまるとは言わないが特有の欠点がある。

この度の東日本大震災に当たっても表れたが、危機に面したとき批判を怖がって決断せず逃げるのだ。備蓄石油の大幅な取り崩しを決定したのは震災の日から10日もたっていた。

その間に全国で買いだめが進んでしまった。国民の怒りをかった原子力安全・保安院東京電力も、同じようなエリート集団が中枢を担っている。

出世のエスカレーターに乗れないノンキャリアの中にも能吏が多くいる。先の国家公務員制度改革案の中にはキャリアとノンキャリアの壁を取ることが提言されていた。かつて幕藩体制を打破して近代日本を確立したのは下級武士ではなかったか。マスコミも一律に公務員たたきはせず、今後の日本を背負う勢いのある公務員を見つけ出し支援してほしい。

まあ何とかと官僚は使いようってことで。
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