尖閣事件から1年

船長釈放で司法混乱 強制起訴も公判めど立たず産経新聞 2011年9月6日)


中国漁船衝突事件をめぐっては、中国人船長の釈放の判断について事件から1年が経過しても検察内部で疑問の声が上がっている。今年7月には検察審査会が船長を「強制起訴すべき」と議決したが、公判が開かれる見通しは立たず、司法の混乱も招いている。

「検察官の立場からすれば、法と証拠に基づいて起訴すべきだった。政治的に問題があれば法務大臣による指揮権の発動を受ければよかった」。ある検察幹部がこう話すように、内部でも船長を釈放した判断を批判する意見は少なくない。

「司法の独立を危うくした」(中堅幹部)との声もあり、尖閣事件がいまだ尾を引いていることがうかがえる。

海上保安庁が昨年9月8日に中国人船長を逮捕した直後、当時の菅直人首相は「わが国の法律にのっとって厳正に対応していく」と強調。送検を受けた検察当局も当初、起訴する方針で捜査を進めていた。しかし、中国当局からの“圧力”を受け、状況が一転した。

9月21日に中国の温家宝首相が船長の即時釈放を求める発言をし、同23日には準大手ゼネコン「フジタ」の社員4人が拘束されたことが発覚。その結果、那覇地検は同24日、「わが国の国民への影響や、今後の日中関係を考慮すると、これ以上、身柄を拘束して捜査を続けることは相当ではないと判断した」などと異例の説明を行い、翌25日、船長を釈放した。

こうした経緯から、検察庁内では「政府は中国の反応や影響を前もって考えて逮捕するか、最後まで『国内法で粛々と処理する』という姿勢を維持してほしかった」といった、政府の対応への不満も聞かれる。

11月には、衝突場面を含む映像が動画投稿サイト「ユーチューブ」に流出する事件が発生。結局、今年1月、映像を流出させた元海上保安官一色正春氏と、中国人船長を一斉に起訴猶予処分とし、“決着”がはかられた。

だが、那覇検察審査会が今年7月、中国人船長を強制起訴すべきだと議決。議決書は、「日本領海内での船長の行為は処罰に値する」と指弾した。

公判を開くには起訴状を被告人に2カ月以内に送達する必要がある。中国側の協力を得るのは不可能とみられ、公判が実現する見通しは極めて低い。「司法への国民参加」が有名無実化するという状況にも陥っている。

というか、付審判請求では公務員は起訴されることが当然視されていたが、検察審査会の強制起訴制度では被告人に起訴状が届かないということもありうるんだよな。

逮捕が当然視されるほど厳罰が予想される重大犯罪が強制起訴されて逃亡されることだってありうるかも。
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