裁判員裁判制度
裁判員制度施行3年目、長引く審理・負担増加(読売新聞 2011年12月31日)
裁判員制度の施行から3年目の今年、9000人以上が裁判員を経験し、27日までに死刑の9人を含む1525人の被告に判決が言い渡された。 審理の長期化など、制度の課題も浮き彫りになった。 ◆相次ぐ死刑判決◆ 今年は東京、千葉、長野、大阪地裁などで9件の死刑判決が出た。検察側が死刑を求刑して死刑判決が出なかったのは、無期懲役にとどまった1件だけ。最高検幹部は「求刑の基準は従来と変わっておらず、検察官の説明を裁判員が理解してくれた結果だ」と分析する。 大阪地裁で審理された15人死傷のパチンコ店放火殺人事件では、裁判員裁判で初めて死刑の合憲性が争点となった。裁判員も議論に参加した結果、「死刑囚はそれに値する罪を犯しており、多少の精神的・肉体的苦痛は甘受すべきだ」とする合憲判断が出された。 ◆控訴審で逆転◆ 東京高裁は3月と12月、覚醒剤密輸事件で裁判員裁判では無罪となった2被告について、「1審は証拠の評価を誤った」などとして逆転有罪を言い渡した。 いずれも、犯行グループから運搬や受け取りを依頼された荷物の中に「覚醒剤があるとは知らなかった」などという被告の言い分の真偽が問題となった。市民感覚が反映された結論を裁判官が否定した形だ。 最高裁の司法研修所は裁判員制度が始まる前、「経験則上、あり得ないような不合理な結論を除き、裁判員裁判の判断は尊重すべきだ」との研究報告を公表している。最高裁は、この2件のうち1件について1月に口頭弁論を開くことを決めており、控訴審のあり方について、新たな判断を示す可能性がある。 ◆出向く日数増加◆ 被告が多数の事件で起訴されたり、争点が多かったりする公判が増えたことで、審理が長期化する傾向も強まった。 最高裁によると、裁判員らが地裁に出向く「職務従事日数」が10日を超えた事件は、昨年1年間で14件だったが、今年は10月末までで34件に達した。 |