小沢一郎の今後

消費税法案阻止 小沢氏、描けぬ倒閣戦略 5月末の採決に照準産経新聞 2012年3月13日)


野田佳彦首相が「不退転の決意」を固める消費税増税関連法案をめぐる攻防がいよいよ始まる。首相は23日の閣議決定に向け、一気に党の了承を取り付ける考えだが、小沢一郎元代表は党内を混乱に陥れ、自民党との「話し合い解散」の望みを絶つ構えを見せる。

政府が消費税増税関連法案を23日に閣議決定する方針を固めたことを受け、小沢一郎民主党元代表率いるグループが倒閣への動きを加速させた。まずは14日から始まる党の事前審査を「数の力」で揺さぶる。それでも首相が法案提出を強行すれば、内閣不信任決議案同調をちらつかせながら法案とともに内閣を葬り去る算段だという。とはいえ除名覚悟で小沢氏と決起する議員が何人いるかは未知数。小沢氏自身も青写真を描き切れていないようにみえる。

12日午前、衆院第14委員室に姿を現した小沢氏は自らの肖像画に目を細めた。描いたのは「小沢一郎政治塾」OBの沢田塁氏。お祝いに駆けつけた塾出身の議員に小沢氏はこう語った。

「18年前に在職25年表彰を受けたときは掲示してもらうつもりなどなかったんだ。ありがとう!」

14委員室は皮肉にも法務委員会が開かれることが多い。ある側近議員は委員長席の真後ろに掲げられた肖像画を見上げて苦笑した。

「法務・検察官僚に『分かっているだろうな』と言っているみたいだな…」

小沢氏は終日ご機嫌だった。昼は衆院議員食堂で若手議員とカレーをほおばり、夕には都内のパーティーでこうあいさつした。

「今すぐ選挙はないが、いつ何時(なんどき)、戦(いくさ)が来ても打ち勝つ信頼を得ておかねばならない。任期満了まで1年半。あっという間だぞ」

野田佳彦首相が画策する消費税増税法案と引き換えの「話し合い解散」を阻止しようとの決意がにじむが、実はその手立ては見つかっていない。

小沢氏はヤマ場を5月末の法案の衆院採決時だとみる。衆院(定数480、欠員1)過半数は240人で民主党会派は291人。自民、公明、国民新党などが反対だと仮定すれば民主党で53人が造反すると否決される。小沢系民主党議員は衆院だけで約70人。単純計算ならば否決はたやすい。

だが、党執行部は造反議員を除名し、次期衆院選で「刺客」を立てるはず。小沢系は選挙基盤が弱い若手が多いだけに決起を促すには「任期満了まで解散がない」との確約が必要となる。小沢氏が水面下で連合や輿石東幹事長らに働きかけ、首相の「解散衝動」を押さえ込もうと工作する理由はここにある。

ただ、小沢系にとって昨年6月2日の菅直人内閣への不信任決議案採決はトラウマとなっている。前夜までに小沢氏は衆院71人を固め、可決は確実な情勢だった。鳩山由紀夫元首相が土壇場で否決を呼びかけたため「可決→内閣総辞職」のシナリオは幻となったが、このとき小沢氏は本会議場に姿を現さなかった。ある側近はこう漏らす。

「総大将の欠席で結束は一気に弱まった。だから1年前と脚本家も出演者も同じではダメだ…」

では新たな脚本とは何か。デフレ下の増税に反対する馬淵澄夫国土交通相ら中間派との連携か。それとも橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会と連携して新党結成か。小沢氏の奥の手はなお見えない。(坂井広志)


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