運転死亡事故と刑罰

「危険運転」適用は困難 無免許・居眠り対象外産経新聞 2012年5月3日)


京都府亀岡市で集団登校中の小学生ら10人が車にはねられ死傷した事故で、自動車運転過失致死傷容疑などで送検された少年(18)に対する危険運転致死傷罪の適用が、極めて困難な情勢になっている。要件が厳しく、少年が行った無免許、居眠り運転が対象になっていないためだ。「過失」を念頭に進む京都府警の捜査に、交通事故の遺族から居眠り運転を危険運転罪の対象に含める法改正を求める声も上がり始めた。

捜査現場「悔しい」

「本当はもっと重い罪に問いたい。現場はみんな涙を流して悔しがっている」。少年を危険運転致死傷罪に問えない、と明言した府警幹部は唇をかんだ。

危険運転致死傷罪の法定刑の上限は懲役20年。一方で、送検容疑の自動車運転過失致死傷罪は懲役7年に過ぎない。今回のケースでは、道交法違反(無免許運転)罪が併合されても懲役8年にとどまる。

実は、こうした法定刑の重さがかえって足枷となり、危険運転罪は厳格に適用すべきだという考えが共通認識となっている。

危険運転罪に問われる典型例は、アルコールや薬物の影響▽高速度▽信号無視−など。これに対し、条文に明記されているにもかかわらず、判例すらないケースがある。「制御する技能を有しないで自動車を走行させた場合」、つまり「未熟運転」だ。
 
無免許、居眠りでも

一度も免許を取得したことのない少年による今回の無免許運転は、未熟運転に当てはまるように見える。

しかし、少年は平成22年に府警に摘発され解散した暴走族グループの中心メンバーだったことが判明。ある捜査関係者は「過去に事故を起こさず運転を続けてきた実績があれば『技能あり』と判断することは可能になってしまう」と話す。


居眠り運転はどうか。少年の供述では、少年は過労運転の原因となりやすい定員オーバーの車を一晩中、運転していたとされる。疲れ果てて居眠りをすれば、その時点で「故意」に問える可能性は出てくる。

ただ、そもそも居眠りという言葉が条文に出てこない以上、やはり危険運転罪の適用は難しいという。




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