アジア開発銀行総裁後任人事

アジア開銀人事に波及 総裁ポスト失う恐れも(日本経済新聞 2013年2月25日)


黒田氏起用の最大の障害とされてきたのが、ADB総裁の後任問題だ。政府内では「日本のデフレ脱却が最優先」との声がある半面、「任期を4年近く残して国内事情で途中辞任すれば、加盟国から批判が出る」(財務省幹部)との指摘も少なくない。

出資比率15.65%(2011年末)と米国と並ぶ最大出資国として日本が半世紀近く維持してきた総裁ポストを失う可能性もある。

黒田氏の後任を選ぶ選挙には100日程度かかるとされている。日本政府内には中尾武彦財務官らを推す声があるが、1966年のADB発足以来、日本が総裁ポストを独占してきたことへの不満もくすぶる。

「中国(出資比率6.46%)はADBでの影響力拡大を狙っており、東南アジア諸国連合ASEAN)の中小国と組んで対立候補を擁立する」との見方も出ている。

黒田氏後任のアジア開銀人事は中尾財務官軸に調整 5月に総裁選、ポスト独占に批判も(産経新聞 2013年2月25日)


黒田東彦氏を日銀総裁に起用する上で、懸念材料となってきたのが、アジア開発銀行総裁の後任人事だ。政府は現財務官の中尾武彦氏をアジア開銀の次期総裁候補として推すことで調整に入っている。だが、総裁がこれまですべて日本人であることに一部で批判も出ており、黒田氏が辞任すれば、中国などが総裁ポストを狙っているともされる。総裁は、5月に行われる見通しの加盟各国による投票で決まる。

アジア開銀は1966年の設立以来、8代にわたって、日本が総裁ポストを占めてきた。政府は、財務省の事務方ナンバー2で、国際金融分野でも実績のある中尾財務官を充てることで、いち早く後任人事を固め、ポスト維持を狙う。

黒田氏が辞任した場合、アジア開銀は、当面は6人いる副総裁の中から、総裁代行を選出し、対応する。その後、加盟各国による投票で、総裁を選出する。5月にインド・ニューデリーで年次総会が予定され、このタイミングが総裁選になるとの見通しが強まっている。オーストラリアやニュージーランドなども候補をたてる可能性がある。

ただ、中国については可能性は低い。アジア開銀世界銀行など、新興国支援機関のトップ人事は、利益相反を避けるため、融資を受ける国については、就任は難しいとされる。現状でも10億ドルを超える融資を受ける中国が、アジア開銀の総裁ポストを獲得することは困難で、中尾氏を軸に調整が進むとみられる。

アジア開発銀:総裁に中尾財務官推薦へ 政府(毎日新聞 2013年2月25日)


政府は25日、日銀総裁黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁を起用する人事案が国会で承認された場合、ADB総裁の後任に財務省の中尾武彦財務官(56)を推薦する方針を固めた。黒田総裁が辞任すれば、ADBは加盟国による選挙を行い、5月までに新総裁を選出する見通し。

ADBは66年の創設以来、最大出資国の日本が歴代総裁を占めてきた。任期途中の退任は珍しくないが、いずれも後任候補が固まってからだった。黒田総裁は急な退任となるため、一部には「中国などが対抗馬を擁立するのではないか」との見方もあるが、現時点で表立った動きはなく、中尾氏の選出が有力視されている。

中尾氏は78年に大蔵省(現財務省)に入省。国際局長などを経て、11年8月から財務官として国際会議や通貨交渉などを担当している。欧州債務危機を受け、日本の国際通貨基金IMF)への600億ドル(約5.6兆円)の追加拠出をとりまとめたほか、東京で昨年、48年ぶりに開かれたIMF総会や、円安批判が起こる中で今月行われた主要20カ国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議で交渉役を務めた。

アジア開発銀行新総裁 日本人で調整へ(NHK 2013年2月26日)


次の日銀総裁アジア開発銀行の黒田総裁を起用する方針が固まるなか、政府は、アジア開発銀行の新しい総裁について、引き続き、アジアの安定した経済成長に日本が役割を果たす必要があるとして、日本人が就任できるよう、調整を進めることにしています。

安倍総理大臣が、焦点だった日銀の新たな総裁に、アジア開発銀行黒田東彦総裁を起用する意向を固めたのに伴って、黒田氏は平成28年11月までの任期を待たず、近く、辞任する見通しです。

後任となるアジア開発銀行の新しい総裁について、政府は、引き続き、アジアの安定した経済成長に日本が役割を果たす必要があるなどとして、日本人が就任できるよう、調整を進めることにしています。

候補としては、財務省の中尾武彦財務官を軸に人選を進め、固まれば、黒田氏の正式な辞任表明を受けて、推薦することにしています。アジア開発銀行は、アジア各国の経済発展を促すため資金面などの支援を行う国際機関で、日本とアメリカが出資金の30%余りを占め、歴代の総裁はすべて日本人が務めています。

ただ日本の国内事情での総裁交代となる今回は、加盟国からの批判や、東南アジアなどほかの国による候補者擁立の動きも予想されるため、政府としては、各国の動きを慎重に見極め、対応を検討することにしています。


財務相、中尾武彦氏は「候補の1人」 ADB総裁の後任(日本経済新聞 2013年2月26日)


麻生太郎副総理・財務・金融相は26日の閣議後の記者会見で、黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁の後任候補について、中尾武彦財務官を「1人の候補者」と述べた。ADB総裁を決める加盟国参加の選挙では「日本が総裁のポジションをとるべく、選挙運動をやらねばならぬ」と強調した。

安倍晋三首相が次期日銀総裁候補に黒田氏を選んだことで、1966年のADB発足から8代にわたって独占してきた総裁のポストを日本が維持できるかが焦点となっている。政府は中尾財務官を擁立する案を軸に調整を進めている。