壬申戸籍がヤフオクに出品

身分・前科記載の「壬申戸籍」?ヤフオクに出品…明治5年作成、閲覧の対象外 法務省、ヤフーに削除要請


明治5年に作られた「壬申(じんしん)戸籍」とされる文書が、インターネットのオークションサイト「ヤフオク!」に出品されていたことが26日、分かった。「士族」「平民」といった当時の身分や前科が記載されている壬申戸籍は本来、法務局で厳重に保管され、閲覧できない。法務省は、「プライバシー保護の観点から問題がある」などとして、サイトを運営するヤフーに取引を中止し、文書の画像を削除するよう要請した。

要請は24日付。文書の真贋(しんがん)は不明だが、法務省は「あたかも本物の戸籍が売買されているように見え、戸籍行政の信頼を損なうおそれがある」としている。

ヤフーは産経新聞の取材に対し、25日付で「削除は難しい旨を法務省に伝えた」と回答していたが、入札期限を迎える前の26日午前8時46分、オークションは終了。落札者はいなかった。ヤフーは「出品者の判断で出品を取り消した」としている。

出品されていたのは「明治5年戸籍」とする文書。20日にオークションが開始され、期間は27日夜までの1週間。25日午後10時50分時点で22件の入札があり、現在価格は1万5500円だった。

サイトに掲載されていた画像によると、文書はひもでつづられ、住所や名前に加え、「平民」「賃仕事稼」などの記載があった。徴兵検査に不合格だったとする記載がある人もいた。

壬申戸籍は日本初の統一的な戸籍で、当時の身分や前科のほか、被差別部落の出身者であることが分かるような記載がされていることもある。

法務省は、昭和43年の通達で壬申戸籍を閲覧対象外にするとともに、封印するよう指示。それまでは市区町村で本人以外も閲覧可能だったが、現在は厳重に梱包(こんぽう)した上で法務局に保管されており、法務局職員も含め閲覧することはできない。

法務省は「個人情報である戸籍の取り扱いには留意すべきであり、特に壬申戸籍に関する事案については、今後も厳正に対処したい」としている。

インターネットのオークションサイトに出品されていた「壬申戸籍」とされる文書をめぐっては、145年前の戸籍の記載であっても個人情報にあたるなどとして、法務省が画像削除を要請。一方のヤフーはこれに応じない姿勢を示した。結局、出品者の判断で出品が取り消されたため売買には至らなかったが、取り消しまでには多数の入札もあり、人権やプライバシーの保護について課題を残した。

ヤフーは「ヤフオク! ガイドライン細則」の中で、法令違反の可能性がある商品や、ヤフー独自の判断で不適当とみなす商品などは出品を禁じている。

サイトに掲載された画像からは、複数の住所や氏名、生年月日が読み取れる状態だったが、ヤフーは、取引中止と画像削除を要請した法務省の担当者に「削除は難しい」と伝えたという。理由については25日付の回答で、「今回、指摘されている戸籍は145年前のものであり、既に個人情報ではなくなっているため」などと説明していた。

これに対し、法務省の担当者は「戸籍に記載されている人はおそらく生存していないので、ただちに生存者の個人情報とはいえない」とした上で、「記載された人の子孫が画像を見てどう思うかを考えれば、やはりプライバシー上の問題がある」と人権上の配慮に理解を呼びかける。

当時の戸籍に記載されているのは本籍だが、「今も記載の住所に子孫が住んでいる可能性がある」(担当者)という。

一方、今回の出品については「法的に打つ手はなく、要請に応じるかどうかはヤフーの判断に委ねるしかない」としていた。