鈴木宗男二審判決要旨

鈴木宗男議員判決要旨 東京高裁


衆院議員鈴木宗男被告に対する26日の東京高裁判決の要旨は次の通り。(肩書はいずれも当時)

【島田建設事件】

弁護側は贈賄側の島田建設社長の取り調べ時、検察官から同社を談合で検挙するのは容易だが、受託収賄の件に協力すれば談合について検挙しないなどと圧力があり、虚偽供述をしたと指摘するが、不当な圧力をうかがわせる証拠はない。同社常務は昨年末の上申書で現金授受や請託を否定。だが1審で現金授受と請託を具体的かつ詳細に証言、控訴審でも訂正の必要があると述べなかったのに、陳述書で突然変更した合理的理由は全くうかがわれない。陳述書の内容は不自然だ。弁護側は、島田建設が落札できるよう被告から受注調整の働き掛けを受けたとされる北海道開発局港湾部長について、検察官に迎合した供述をして官製談合での検挙を逃れていると主張するが、それをうかがわせるものはない。北海道開発局による「本命業者」指名は官製談合という犯罪行為で、その働き掛けは北海道開発庁長官の職務権限でないとも主張するが、最高裁判例によるとわいろの対価は適法な行為かどうか問われない。

【やまりん事件】

弁護側は、やまりん側が松岡利勝衆院議員にも面会、現金200万円を渡していると指摘。林野庁が同社への便宜を図るよう働き掛けを依頼するなら、被告ではなく林野庁OBで林業問題に積極的な松岡議員のほうが自然で合理的と主張する。だが被告の地盤は北海道で、松岡議員より政治家としてのキャリアや政府内の地位が勝っており不自然ではない。贈賄を認めたやまりん社長の供述が重大な変遷を遂げているとも指摘するが「やまりんが助かると思いうそで誇張した陳述書の作成に応じたが、被告が逮捕されて完全に駄目だと思い、その後は法廷でも正直に話している」と証言、変遷の合理的理由を述べている。働き掛けなどについての林野庁関係者の証言も、弁護側が言うような不自然さはない。

【虚偽記載】

弁護側は被告と秘書らが共謀し、政治資金収支報告書に虚偽記入したことを認定した1審判決は事実を誤認していると主張するが、被告が秘書からパーティー券の売上金が記載されていない収支報告書を見せられて収入総額を確認した際、何も指摘しなかったことなどを考慮すれば事実誤認はない。

【偽証】

弁護側は、被告の衆院予算委員会での証言について、島田建設からの収支報告書以外の献金はないが、社長個人からの収支報告書以外の献金は付き合い程度にあったと述べたと主張する。しかし証言内容は、社長からセミナーなどについての協力は得ているがそれ以外の献金はないという趣旨を答えたのが明らかだ。国際緊急援助隊派遣中止について被告は直前に説明に来た外務省の課長に対し、自らがアフリカ外交に尽力していたことを強調した上で「派遣を認めない」と怒鳴った。弁護側は、被告が予算委で一般的な政治信条としてモザンビークを支援していると証言しただけと指摘、1審判決の「派遣に反対したり異議を述べたことはないと虚偽を述べた」との認定を誤りと主張する。しかし「私が反対するとかどうこう言うことは考えられない」と証言したのは、派遣に反対したことを否定した趣旨であることは明らかで誤りはない。

【量刑不当の主張】

受託収賄とあっせん収賄は、被告を支援していた地元業者から請託を受け、安易に応じ犯行に及んだもので経緯、動機に酌量すべき事情はない。収支報告書虚偽記載は、政治資金の公正透明化が必要とされている社会情勢を意に介さず、政治団体からの多額の寄付や私的流用を隠匿したもの。議院証言法違反の事案は、国権の最高機関である国会の第一院をないがしろにしたもので、いずれの犯行も酌量すべき事情はなく悪質で被告の刑責は軽視できない。被告が政府、与党などの要職を歴任し国政に貢献したことや、政治への信頼を損ねたことを謝罪しているなどの事情を十分考慮しても、刑の執行を猶予すべきではなく一審判決の量刑が重すぎて不当とはいえない。
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