鈴木宗男一審判決要旨

鈴木元議員判決要旨


あっせん収賄罪などに問われた元衆院議員鈴木宗男被告(56)に東京地裁が5日言い渡した判決の要旨は次の通り。

【事実認定の補足】

▽受託収賄

島田建設会長らが業績の落ち込みからその回復を図り、北海道開発庁長官に就任した鈴木被告に開発局港湾部長への口利きを依頼することとし、受注希望工事をリストアップし、謝礼として現金を供与した。多田淳・元政策秘書に面会約束をとり現金を交付した状況など経緯について具体的、詳細に供述している。北海道開発局港湾部長が、官製談合の実態を明らかにした上で、上司の被告から特定会社の便宜を図るよう指示された旨の虚偽を述べる理由はない。2人の供述の信用性を疑う余地はない。当時、北海道開発局開発建設部発注の港湾工事の受注業者の決定は、指名競争入札の形をとっていたが、工事を統括する農水・運輸の担当次長が落札させる本命業者を記載し、港湾部長が決定。本命業者が他の入札業者と調整するなどして落札する方法だった。会計法規に反するが、慣行に基づく職務と認められる。  被告は、港湾部長が本命業者の決定をしていた実態を知っていたと認められ、長官としては開発局への指揮監督権限は認められないが、開発局職員の服務に対する統督権限により、請託を受けたと認められる。本件各現金の供与はわいろと認めるのが相当である。

▽あっせん収賄

被告の支援者のやまりん元会長らが、被告に対し林野庁に1年分の立木購入の口添えを依頼する請託をしたことは、被告が請託を受け林野庁側に働き掛けをした状況などについて林野庁側など各証言で裏付けられる。 被告の主張通り、各証言が虚偽だとすれば、やまりんと林野庁の関係者が通謀して被告に罪を着せようとしていると想定せざるを得ないが、このような状況は関係証拠上まったく認められない。被告は、現金授受当日の内閣官房副長官室は、人の出入りが多く、別の来訪者もあったので、被告の目の前のテーブル上に現金入りの祝儀袋を置いていた旨のやまりん関係者の供述は不自然とも主張する。しかし、祝儀袋に入った就任祝いをテーブル上に置くことは、当時の状況としては必ずしも不自然ではない。被告は不正な行為をさせる請託と承知の上で現金供与を受け、多田元秘書も認識していた。

政治資金規正法違反

被告は、収支報告書提出時には1億円が裏金化していたことを知らず多田元秘書らと虚偽記入の共謀はないと主張する。しかし多田元秘書が被告の了解を得ず1億円を超える金額を裏金化することを独自に発案するとは考えにくく、裏金化について、元秘書との間で少なくとも了解し合っていたと推認できる。

▽議院証言法違反

秘書給与肩代わりの問題については、証人尋問当日の朝、元私設秘書に電話をかけ、秘書時代の給与を島田建設が支払っていたことを確認した。被告は「18年間も肩代わりしていた」との趣旨の尋問と理解した証言で、虚偽ではないと主張する。しかし尋問に18年間との文言はなく、肩代わりの有無をただしたことは明らか。被告の公判供述は信用できない。国際緊急援助隊派遣中止について、被告は外務省担当課長に面会した際「報告が遅い」と言ったが「派遣を認めない」とは言っておらず、止める権限もないと主張する。  しかし被告が医療チーム派遣に反対した事実は動かず、尋問は支援クルー出発中止の原因が被告にあるか否かをただすものだ。これを否定する証言は偽証罪に当たる。

【量刑の理由】

受託収賄の犯行では、鈴木被告は請託を受けると、何のためらいもなく北海道開発局の港湾部長に働き掛けをして支援者の便宜を図り、会社はほぼ請託の趣旨の通り工事を受注した。犯行は、開発庁長官の地位を私物化し、北海道総合開発計画事業の公正な遂行を阻害し、開発行政への国民の信頼を著しく損ねた。あっせん収賄の犯行では、被告は請託に応じて林野庁次長に数度にわたって不正な請託の実現を要求し、林野行政の公正な遂行がゆがめられ、盗伐をした会社に不正な利益をもたらせかねない危険があった。官房副長官の職務や林野行政への国民の信頼を損ねた。  規正法違反の犯行は、政治資金の収支を公開して国民の監視下に置き政治活動の公明と公正を確保するという法の趣旨にまさに背馳(はいち)する行為だ。多額の政治資金の収支を国民の目から隠匿し、政治資金規正制度への国民の信頼を揺るがした。 議院証言法違反の犯行も、国政調査権の適正な行使を妨げた。以上のように、鈴木被告は衆院議員であっただけでなく内閣の要職を担っており、高度の倫理性と廉潔性を求められていたのに、支援者からわいろを収受して利益を図った。国会議員に対する不信感を醸成したものとして厳しい非難に値する。そればかりか捜査・公判を通じて犯行をいずれも否認し不合理な弁解に終始した。自分に不利な証言をした者をひぼうするような供述もしており、反省の情は皆無だ。以上の事情によれば刑事責任は相当に重い。一方(1)各収賄はわいろを要求したものではなく支援者からの積極的な贈賄に応じた(2)金額も国会議員による同種事案に比べて高額ではない(3)要職を歴任して国政に対する貢献も認められる(4)国民に政治不信を招いたこと自体に関しては謝罪の意思を示している−−など有利とすべき事情もある。これらの事情を総合考慮すると、刑事責任の重さに思いを致さず、国会での証人尋問でも捜査・公判でもあえて虚偽の陳述をしてはばからない鈴木被告に対し、刑の執行を猶予するのは相当ではなく、この際実刑をもって臨むべきだと考える。
今日は鈴木宗男の一審判決からちょうど6年です。 人気ブログランキングへ 鈴木宗男衆議院外務委員長起用問題を見るにはここをクリック