人間が腐ってる首相
「裸のペテン師」菅直人首相 人間性だけは首尾一貫(産経新聞 2011年6月30日)
ギリシャ神話のミダス王は触れるもの全てを黄金に変えた。菅直人首相は接する者全てを敵に変える。これもまた特異な能力だと言えよう。敵は野党だけにとどまらない。閣僚も民主党執行部も公然と居座りを批判する。各種世論調査では国民の8割が早期退陣を求めている。 かくも人心は離れているが、首相は一向に意に介さない。それどころか28日の民主党両院議員総会では聞かれてもいないのにこう言った。 「エネルギー政策をどのような方向に持っていくかが、次期国政選挙で最大の争点になる」 「脱原発」を掲げて衆院を解散する可能性をにおわし、「菅降ろし」を牽制(けんせい)したのか。29日、首相官邸で記者団に「脱原発解散の考えは?」と声をかけられた際も思わせぶりに首をかしげてみせた。さすが、幼いころから「口から生まれてきた」と呼ばれてきただけのことはある。 とはいえ、「手柄は自分がとりましょう、汗は他人にかかせましょう」という政治手法は相変わらずだ。安全確認済みの原発の再稼働については海江田万里経済産業相にすべて押しつけ、自らが関わろうとしない。 27日夜に久しぶりに開いた記者会見でも、原発を抱える自治体に自ら赴き、説明する考えがあるのかどうかを問われたが、一切答えなかった。「再生エネルギー推進派」というイメージを損ねたくないのだろう。 首相の念頭には、小泉純一郎元首相による郵政解散があるとみられる。このままでは8月中に退陣に追い込まれる公算が大きいが、イチかバチか解散して勝利すればさらなる延命の道が開けるからだ。 それならばシングルイシューを世に問うに限る。「当面の原発存続はやむをえない」との意見が多い自民党を「原発利権にむらがる抵抗勢力」と位置付け、再生エネルギー推進を「錦の御旗」に掲げれば勝てる。そう踏んでいるのではないか。 ちょっと待ってほしい。首相はかつて雑誌のインタビューで小泉氏の郵政解散をこう批判したのをお忘れか。 「(現代社会の)不安を誰かを悪者にすることで解消しようとしたり、悪者を作り上げて叩きたいという衝動がある。この衝動に悪のりする政治家は本来民主主義政治のリーダーとしては不適格です」 原発事故でも、解散権でも、保身に利用できるものは何でも使う。仲間であろうと平気で踏み台にし、言行不一致など気にしない。そんな政治手法はもはや見透かされている。首相の卑しくも哀れな姿を公明党の山口那津男代表が見事に言い表した。 「裸のペテン師だ!」 首相はこれまで自己紹介する度に、婦人運動家、市川房枝元参院議員を「政治の師」と仰ぎ、市川氏の選挙活動を手伝ったことを「政治活動の原点」だと振り返ってきた。14日の参院東日本大震災復興特別委員会でも「私は昭和51年のロッキード事件のとき、初めて無所属で衆院に立候補した」と語り、市民派をそれとなく強調した。 では、菅氏の初選挙について市川氏はどう見ていたか。実は著書「私の国会報告」にこう記している。 「選挙が始まると(菅氏は)私の名前をいたる所で使い、私の選挙の際カンパをくれた人たちの名簿を持っていたらしく、その人達にカンパや選挙運動への協力を要請強要した」 市川氏の秘書だった紀平悌子元参院議員は、首相が東工大の学生運動のリーダーだった頃、警視庁警備第1課長として捜査していた初代内閣安全保障室長の佐々淳行氏の実姉に当たる。 あるとき、佐々氏が姉に「市川さんは菅氏を評価しているのか」と聞くと、姉は冷ややかにこう言ったという。 「何を言っているの! 市川さんは『菅はよくない』と本当に怒っているわ」 首相の政策や政治方針は常に揺れ動いているが、その人間性だけは一貫してぶれていない。 |