ヤマ場の多い臨時国会 ねじれの中、波乱含み

ヤマ場の多い臨時国会 ねじれの中、波乱含み産経新聞 2010年10月20日


第179臨時国会が20日、召集された。会期は12月9日までの51日間。平成23年度第3次補正予算案など重要法案の審議には十分にみえるが、衆参ねじれで野党に配慮を重ねなければならない上、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議など野田佳彦首相の外遊も続くため実はかなり窮屈。閣僚の失言や民主党小沢一郎元代表の公判など不確定要素も少なくない。序盤から終盤までどんなヤマ場が待っているのか。(今堀守通)

【序盤戦】閣僚狙い撃ち

まず冒頭1週間の見どころは、各委員会で開催される閣僚の所信と質疑だ。

野田内閣では9月2日の発足直後から一川保夫防衛相の「安全保障は素人だが、これが本当のシビリアンコントロール」発言や、小宮山洋子厚生労働相の「たばこ700円」発言など閣僚の失言が続出した。

このため民主党は先の臨時国会で閣僚の所信表明を強引に見送ったが、結局は平成23年度第3次補正予算案の審議入りの条件として応じざるを得なくなった。

こんな中、平野達男震災復興担当相が津波の犠牲となった同級生を「バカなやつ」と発言した。野党が見逃すはずはない。

加えてマルチ商法業界との関係が深い山岡賢次国家公安委員長、詐欺罪で有罪判決を受けた男性を秘書官に起用した平岡秀夫法相ら追及相手は事欠かない。ここで失言や不祥事により、鉢呂吉雄経済産業相に続き閣僚辞任に追い込まれれば、その後の審議はめどがたたなくなる。

【中盤戦】復興財源

中盤のヤマ場はやはり28日に提出される第3次補正予算案の審議だ。復旧や除染など緊急性を要する事業が多数盛り込まれるため自民、公明両党は賛成の意向を表明してはいるものの、成立は11月中旬以降にずれ込む公算が大きい。

問題は復興債の償還財源となる復興増税だ。

まずたばこ税増税公明党は賛成する見通しだが、葉タバコ農家や販売業者の支持を受ける自民党は連日のように反対の会合を開催している。

民主党の支持基盤にも葉タバコ農家は少なくない。強引にたばこ増税を関連法案に盛り込めば自民党が態度を硬化させるのは確実。たとえ公明党の協力を得て法案を成立させても遺恨は残る。

【終盤戦】政治とカネ

政治資金規正法違反罪に問われた小沢氏の公判が始まったことも政府・与党に暗い影を落とす。

民主党平野博文国対委員長は14日の与野党国対委員長会談で「政治とカネ」を議題とする集中審議を「実現できる方向で頑張る」と応諾してしまった。

3次補正予算案成立後に開けばよいとタカをくくっていたようだが、公判は会期中だけでも今月28日、11月1、30日、12月1、7、8日と、6日間も開かれる。驚(きょう)愕(がく)の新事実が飛び出せば、野党はいきり立ち、証人喚問など小沢氏の国会招致を求める公算が大きい。

首相は「公判を通じて説明責任を果たすのが基本だ」と国会招致を黙殺する腹づもりのようだが、民主党が関係を重視する公明党は「政治とカネ」に敏感で見て見ぬふりはできない。かじ取りを誤ればすべての審議が空転しかねない。かといって招致に応じれば小沢系議員が黙っていないだけに首相は厳しい決断を迫られるだろう。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加問題で党内には不穏な空気が流れている上、普天間移設問題や武器輸出三原則緩和などリベラル勢力が多い民主党にはセンシティブな案件は続く。民主党という「内憂」、野党との協調という「外憂」を抱える首相が綱渡りの政権運営を強いられることは間違いない。

はああ。
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