白浜の乱

白浜の乱 町長の人事に課長16人が反旗 対立の背景に何が…産経新聞 2011年11月12日)


近畿有数の温泉地として知られる和歌山県白浜町が大揺れだ。先月末、町長が決めた人事異動に不服があるとして16人の課長全員が「降格願」を提出。異動対象者はその後、発令に従ったが、全課長でつくる課長会は「不当人事」として今後も町長と対決していく姿勢だ。騒動の背景にはごみ焼却場の使用期限に絡む問題があり、「地元から現金を要求された」「いや、そんな事実はない」などと生臭い発言も飛び出す始末。いったい南紀の小さな町で何が起きているのか。(板坂洋司)

「唐突としか思われない人事異動は断じて認められない」

先月31日、16人の課長全員が水本雄三町長(58)に「降格願」を提出した。26日に町長が突然通告した異動内示への抗議だった。「町長の思うままに権力を振るう専権」などと、文面は町長を非難する言葉で埋め尽くされ、全課長が自筆の署名を添えた。

今月1日の辞令交付式に、異動対象の課長らを含む12人は時間になっても姿を見せなかった。その後、町長、課長らが別々に記者会見し、互いに相手側の非をなじる泥仕合となった。

行政をつかさどる町長とサポートする課長。両者の間に何があり、なぜこんな事態となったのか。背景には、町のごみ焼却場の使用期限延長にからむ地元側との交渉の難航がある。

もともとごみ焼却場問題は、前町長の時代からの懸案だった。地元との協議がこじれ、前町長は町民に信を問うとして平成22年2月に辞職。翌月の出直し選で当選したが、任期満了直前だったため、2週間後に同じ顔ぶれで選挙が行われ、今度は対抗馬の水本氏が勝ったという経緯がある。

同年9月、町と地元は15年間の使用延長で合意。期限後の焼却場跡地の整備や地域振興策などについて協議してきた。

しかし、その話し合いがもつれ、互いに不信を抱くようになったという。町長は先月29日の地元との交渉に、いったんは出席を約束したが、直前になって「出席しない」と通告。これに地元が反発し、抗議文を出したほか、期限延長合意の協定書まで町に突き返す事態に発展した。

町は地元側に使用期限延長に伴う地域振興事業費として、全体の積立金から3500万円を充てることを決め、議決も経ている。この3500万円は事業費として使うことで、地元とも合意。そのうえで町は、事業費をスムーズに出せるよう「補助基準」の全面見直しに取り組んでいる。

ところが、水本町長と熊崎訓自(くんじ)副町長は今月7日に記者会見し、「10月23日の地元との交渉の中で協力金として現金3500万円を要求された」と説明。「違法性が高く適切ではないので出せない」と拒否すると、「『焼却場を止めるぞ』『副町長は辞めろ』などと恫喝(どうかつ)された」と発言した。そのうえで「これ以上(地元と)協議を続けることは町にとってよくないと考えた」と、交渉への出席を拒否した理由を述べた。

しかし地元との交渉を担当してきた課長会側は「現金の要求はない」と町長発言を真っ向から否定。課長会によると、地元側も町長発言を否定し、あきれているという。この町長側と課長・地元側との意見の食い違いが騒動の発端となった。

課長会は町長発言を否定する根拠として、「協力金への町の考え方」という1枚のペーパーを報道陣に示した。そこには3500万円の協力金について、「町としては現金での支出は控え、地元が必要とする事業を決定してその費用に充てたい」などと書かれており、町長と全課長が出席して7月24日に行われた地元との交渉の場で、町長自身がこの文書を読み上げたという。

課長会は「もちろんその内容に地元も了承した」と説明。「この時点で町長自身が現金で支出しないと発言し、地元が納得したことも理解していた。それゆえ、地元が現金を要求するはずがなく、なぜ町長が『現金を要求された』というのかまったく分からない」と疑問を呈する。

課長会の呼びかけで今月8日、騒動勃発後初めて水本町長と課長会の話し合いがもたれた。課長会によると、町長とは終始、「3500万円の現金を地元から要求されたのか」で議論となり、課長会側は「現金の要求はなかった」と主張したが、町長は「要求された」として譲らず、話し合いは平行線に終わったという。

今回の異動は、地元との交渉を担当し、町長に交渉への出席を説得していた生活環境課長や副課長らが対象だった。課長会は事実上の更迭(こうてつ)人事と受け止め、抗議文や降格願を提出したが、水本町長は今月1日の会見で「(異動は)人心一新だ。更迭ではない。異動に従わねば懲戒処分もありうる」と発言。これに対し課長会側は「異動の再考を」「人事権の乱用だ」と反発し、徹底抗戦の構えをみせている。また、町職員労働組合も「十分な説明もない異動は組織自体の混乱を招く」と町長を批判している。

場内で四面楚歌(しめんそか)となり、町長室に籠城状態となった町長は町民に対し「町政の正常化に全力を尽くす。皆様の支援、協力を」との声明を出した。一方、課長会は「これ以上、町行政を混乱させ、停滞させることはできない」と判断し、7日から異動対象者は町長が発令した職場で職務に就いた。ただ、西牟婁(にしむろ)郡の公平委員会に不服申し立てを行う方針で、「降格願」の取り扱いの結論は出ていない。

当事者以外分かりにくい交渉を経た結果、全課長の「降格願」の提出となった今回の騒動。町民らは「一体役場はどうなってるんや」「何でもめてるんかよう分からん」とあきれ顔だ。

問題解決にはまず町長、課長会、それに地元の皆が冷静に事実を改めて検証し、関係者だけでなく町民も納得できる折り合い点を見いだす努力が必要だろう。町民不在のバトルを続ける愚だけは避けなければならない。

「3500万円の現金要求」からして食い違っちゃってるな・・。
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