指定弁護士の負担
指定弁護士の負担大きく(産経新聞 2012年1月19日)
裁判員制度と同時に平成21年5月に導入された強制起訴制度。司法への国民参加の一翼を担う制度として機能し始めた一方で、裁判で検察官役を務める指定弁護士の負担の大きさなど課題も浮かび上がっている。 これまでに強制起訴されたのは明石歩道橋事故、JR福知山線事故、小沢一郎元民主党代表の政治資金規正法違反事件など、社会的注目を集めた事件が多い。 公判までの過程で、指定弁護士は、検察が不起訴と判断した事件を立証する難しさに直面している。 明石歩道橋事故は強制起訴そのものは全国初だったが、公判前整理手続きに1年9カ月を費やした。検察審査会の「民意」に応えようとする指定弁護士側と、強制起訴そのものを違法と位置付ける弁護側の主張がかみ合わなかったのが長期化の原因だ。 神戸大大学院の大塚裕史教授(刑法)は「争点は公訴時効の成立の可否など、法律的に難解な問題ばかり。検察が立証を不可能とした経緯もあり、指定弁護士に課せられたハードルは高い」と話す。 3月に論告求刑、4月下旬に判決が予定されている小沢元代表の規正法違反事件の裁判では、東京地検の捜査報告書に事実とは異なる記載があることが法廷で発覚し、指定弁護士側の立証に悪影響を与える可能性も指摘されている。 また歩道橋事故は、検察審査会の起訴議決で「重大事故の再発防止」が理由の一つに掲げている。法律家からは「刑事裁判に真相解明や再発防止を過度に求める傾向は、『疑わしきは罰せず』という刑事司法の大原則を否定する」との指摘も出ている。 裁判所法は「施行3年で必要ならば裁判員制度を見直す」と規定している。一方、検察審査会法にはこうした規定がないため、制度改良をどう考えるかも議論の1つになっている。 |