検察審査会強制起訴制度における初の判決

未公開株・強制起訴事件で無罪判決に波紋「結果より過程大事」「制度あり方検討を」産経新聞 2012年3月15日)


平成21年5月に強制起訴の制度が導入されて以降、複数の起訴議決が出され、東京地裁では小沢一郎民主党代表(69)の公判も進む。有権者から選ばれた審査員の「起訴すべきだ」との判断に対する初の判決で無罪が出されたことで、検審のあり方について議論を呼びそうだ。

小沢元代表が問われたのは、資金管理団体陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反罪。今月19日の公判で結審し、4月中にも判決が言い渡される見通しだ。

兵庫県明石市の歩道橋事故(13年)で業務上過失致死傷罪に問われ、初の強制起訴となった元明石署副署長も神戸地裁で公判中。JR福知山線脱線事故(17年)で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の歴代3社長は、同地裁で公判前整理手続き中だ。

白上敏広社長については、那覇地検が嫌疑不十分で不起訴としたが、那覇検審が22年6月に「起訴相当」と議決。地検の再度の不起訴に対して検審は7月、「不明な点があまりにも多く、裁判所で真実を糾明すべきだ」として、起訴議決を出した。

検審制度に詳しい山下幸夫弁護士は「もともと、検察が起訴できないと判断したもので、有罪にするのは難しい事件」と話す。「不起訴になれば証拠は表に出ない。強制起訴されれば被害者は法廷でやり取りが傍聴でき、オープンな場で第三者に判断してもらうことができる」とし、「結果よりも過程が大事な制度」と語る。

一方、元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は「無罪は当然の判断」とする。白上社長も未公開株を所有していたことから「本当に上場するあてがなければ株を購入する訳はなく、詐欺の故意がなかったことは明らか」と指摘。検審の判断には「故意や詐欺の成立を検討した痕跡がなく、2度の議決いずれにも問題がある」と話す。

さらに強制起訴の制度についても「検察官の起訴基準と異なる、検審独自の起訴を認めたわけではなく、あくまで起訴は有罪の心証があった場合に行うべきもの。嫌疑不十分での不起訴については、原則として強制起訴の対象にすべきではない」と述べた。

京都産業大学法科大学院渥美東洋教授(刑事訴訟法)も、「有罪か無罪か分からないから裁判所に真相解明を求める、というのはおかしい」と検審の判断に疑問符をつける。

渥美教授は「起訴によって、人の人生に非常に大きな影響を与えることになる。『無罪の推定』という原則に基づき、有罪が確信できる場合以外は起訴すべきではない」とし、「検審が安易に運用されるようであれば、制度のあり方を慎重に検討することが求められる」と話した。

まあ、この判決は小沢裁判におけるデモンストレーションの一つとして当然注目されるわけで。
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