新鮮さが大事な速報

「遅報」と化した速報態勢(産経新聞 2012年5月1日)


前日の号外など誰も読まないのと同じで、「速報」は間に合ってこそ意味がある。だが、先月13日朝、北朝鮮による弾道ミサイル発射の際に民主党野田佳彦政権は初歩的なミスをいくつも重ねて、速報が速報でなくなってしまった。

政府の検証結果が公表されたが、疑問がすべて解けたわけではない。確かなことは、発射(午前7時38分)から20分以上すぎた8時すぎ、官邸危機管理センターからエムネットで各自治体に「日本政府は発射を確認していない」との否定情報を流している。これが第1の失敗。

次に、田中直紀防衛相の会見(8時22分)で国民に発射を知らせるまでに、発射後約45分もかかったのは第2の失敗といえる。また、衛星回線で瞬時に情報を伝えるJアラートについて「日本の領土内に入ることがないと確信されたので発信しなかった」(藤村修官房長官)と、せっかくの最新システムを使わなかったことは、第3の失敗である。

しかも、「発信は官邸に一本化」され、防衛相会見は「想定外」だったと聞くと、もはや言葉を失う。結局、エムネットで「発射後数個に分裂、日本へ飛来せず」と最終確認されたのが発射後1時間近い8時36分だったのはゾッとするばかりだ。

ミサイルが予定通り飛べば10分前後で日本上空に至るとされた。厳密に言えば、ここまでが速報の勝負どころだ。逆に、これがミサイル攻撃だったらどうなっていたか。

極端な想像をすれば、破壊されて人けの絶えた廃虚の上を「政府はまだ発射を確認していない」とのトンチンカンな放送がむなしく響く−そんな光景を思い浮かべてしまう。

発射は失敗に終わったが、国民への速報という面で政府の対応は物の役に立たない失態だったと思う。

政治の焦点は消費増税法案や原発再稼働などに集中しがちだが、ミサイル対応も日本の平和と安全がかかった重要な問題だ。首相、官房長官以下、失敗を繰り返さないように猛省してもらいたい。

速報もそうだけど、報道ニュースだって新鮮さが大切ですからね。
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