夏の椿事!? 共産党「赤旗」に“敵対”中核派が登場

夏の椿事!? 共産党赤旗」に“敵対”中核派が登場(産経新聞 2012年7月22日)


日本共産党が機関誌「しんぶん赤旗」で、敵対関係にある「中核派」(革命的共産主義者同盟全国委員会)メンバーの“勇姿”を写真付きで紹介するという椿事があった。公安関係者は「信じられないことだ」とビックリだが、一体何が起きたのか…。


「リズミカルにコールする富田さん」


 問題の記事は7月15日付「赤旗」日曜版の16面に掲載された。「原発ノー アピール自分流 伝えたいからにぎやかに!」という特集で、ここ数カ月、金曜夜の恒例となった首相官邸前での「原発再稼働反対」大規模デモへの参加者それぞれの「訴えるスタイル」を紹介する内容だ。

 しかしあろうことか、その中に日本共産党革マル派とともに「反社会的暴力・殺人者集団」と厳しく糾弾してきた中核派の活動家が含まれていたのだから驚きだ。

 記事に登場した「太鼓のリズム音に合わせ、リズミカルにコールする富田翔子さん」はアーティストの顔ももつが、“正体”は中核派の反原発運動の前線たる「すべての原発いますぐなくそう全国会議(NAZEN)」の事務局次長である。中核派の拠点だった法政大学に対する警察当局の「弾圧」への抗議活動でも先頭に立っている“有名人”なのだ。

赤旗」は富田氏を「3歳の女の子のお母さん。脱原発の缶バッジやメッセージTシャツで自分をデコレーション。全身から真剣な思いが伝わってきます」と写真付きで紹介し、こんな彼女のコメントまで掲載した。

 「原発事故以来、数え切れないほどデモに参加しています。デコレーションしたり、踊ったりしてにぎやかにデモをするのは“伝えたい”から。いま動かなければ、将来、娘に顔向けできません」

 そして、写真で富田氏の後方にしっかり写っているのは、全日本学生自治会総連合全学連)の斉藤郁真委員長(法政大学文化連盟委員長)だ。「赤旗」紙面では斉藤氏の氏名や肩書きには触れられず、コメントもないが、まぎれもなく中核派の活動家だ。

 公安当局がその動向をマークする中核派の文字通り“中核”とされるメンバー2人が日本共産党の機関誌に初登場とあいなったわけだ。


「反社会的な暴力・殺人者集団」


 ちなみに、日本共産党の「革マル派」や「中核派」についての公式な立場、見解は以下の通りである。

 《「革マル派」とか「中核派」などと名乗る団体は、凄惨(せいさん)な「内ゲバ」事件などをおこしてきた反社会的な暴力・殺人者集団であり、日本共産党とはまったく関係がありません。

最近の彼らの言動をみると、国際的な無差別テロを賛美し、テロリストへの支持・連帯という主張をさけんでいます。

 2001年にアメリカでおこった3千人近くの人命を奪った9・11同時多発テロについて、「画歴史的行為」(「革マル派」機関紙「解放」01年9月24日号)などとほめたたえ、テロ勢力との「連帯」までかかげてきました。

 日本共産党にたいしては、「テロ根絶」の主張について、口ぎたない悪口を投げつけてきました。

 彼らは、「革命」や「共産主義」などの言葉をかかげています。しかし、実際の役割は、国民の要求実現のたたかいと政治革新のとりくみを、暴力によって混乱させ、妨害することにあります。

 国民の期待と支持が日本共産党に集まることを恐れる支配勢力は、「共産主義」を掲げ、暴力行為をおこなう集団を、日本共産党とかかわりがあるかのように、反共宣伝に利用してきました。

 それは、反共右翼や警察がこうした集団に資金を提供してきたことや、警察が彼らの暴力行為を本気で取り締まろうとせず、「泳がせ」政策をとってきたことにも表れています。

 日本共産党は、彼らの暴力行為を、一貫してきびしく糾弾してきました。

これらの集団が、「改憲阻止」などのスローガンをかかげて、憲法を守る人たちの運動の内部に入り込む策動をしていますが、民主勢力のなかでは、「統一行動の妨害団体」として、「共闘にくわえない」となっています。》(2010年3月27日、党ホームページ掲載)

 最終的に共産主義にするという点では日本共産党中核派は同じだが、共産党は穏健主義で「ちゃんと選挙で共産主義に」と訴えているのに対し、中核派は「クーデターで政権をとって共産主義にする」と主張しているのだ。警察庁の「警察白書」は革マル派中核派を「極左暴力集団」と呼んでいる。


素性に気づかず…


 日本共産党がここまで敵対する中核派の活動家を「赤旗」が取り上げる前代未聞の出来事に、ネット上では早速、「日本共産党革命的共産主義者同盟全国委員会の熱い連帯に万歳!万歳!万々歳!!!」と皮肉った書き込みがされた。

 むろん日本共産党中核派を「容認」したわけではないが、「赤旗」はなぜ、中核派2人を紙面に登場させたのか。打ち明けるのは赤旗関係者だ。

 「取材して書いた記者も編集幹部も2人の素性に気づかなかったのようだ。私も後で知って驚いた」


つまり、編集局内のチェック体制のずさんさが要因だったとみられるが、公安関係者はこう指摘する。

 「赤旗記者が、一般人ならともかく市民団体を名乗っている中核派の有名人の区別がつかないとは一昔前なら考えられないことだ。赤旗記者の採用条件はかつて『党歴3年以上』だったが、現在は年齢・党歴の制限はない。中核派のことも知らないような記者もいるように、最近の若い記者の質も落ちているのではないか」


党内では問題にならず?


 だが赤旗記者の「質」の問題だけではないだろう。「赤旗のゲラ刷りは日刊紙、日曜版を問わず、志位和夫委員長ら上層部も必ず目を通す」(共産党関係者)というから、党指導部の目も節穴だったということになる。日本共産党広報部の説明はこうだ。

 「反原発中核派と共闘しているわけではない。中核派は様々な組織、フロントを通じて活動に参加しており、一般人とは見分けがつかない。中核派だからといって排除していては、我が党の反原発運動自体が成り立たなくなる」

 というわけで、今回の椿事はなぜか党内では問題になっていないようだ。


折しも15日に党創立90年の節目を迎え、じり貧の党勢巻き返しに向け気勢を上げたばかり。翌16日、東京・代々木公園に主催者発表で17万人(警視庁発表は約7万5千人)を集めた「さようなら原発10万人集会」の際には、ヘリコプターをチャーターして空撮し、赤旗初の「号外」を2万5千部発行した。

 「反原発」で活路を見いだそうと盛り上がっている矢先のことだ。中核派メンバーを赤旗紙上で紹介してしまったことは、ほおかぶりするか、とるに足りない話だと決め込むしかないのかもしれない。

 ただ、反原発の方向性は同じだとはいえ“過失”で中核派メンバーを持ち上げたことが、「大失態」であることは間違いない。これを教訓として「赤旗」が今後、中核派の活動を肯定的に取り上げることはなかろう。

人気ブログランキングへ