裁判所の令状さえ下りれば強制捜査・逮捕もできる指定弁護士
問題なのは、特捜部でさえ見送った小沢邸の家宅捜索が行われるのかということ。 「検察の証拠調べが不十分で、かつ自宅に、より重要な証拠があると判断するに足る相当の事由があると判断すれば、自宅に踏み込むこともやぶさかではありません」 こう話すのは、「明石花火大会歩道橋事故」(01年7月)に関する事件で、検察官役の指定弁護士を務めた安原浩弁護士。 安原氏は他の2人の指定弁護士とともに、業務上過失致死罪で起訴され、不起訴となった元明石署副所長を再度事情聴取。職責による強制起訴にこぎつけた人物だ。 小沢氏のケースについて、安原氏は「(家宅捜索の)是非は軽々に判断できない」と前置きした上で、こう解説する。 「指定弁護人は、検察が集めた証拠や調書をすべて引き継ぎます。私のところには段ボール箱で19箱の資料が送られてきました。仮に、彼ら(検察)と見方を異にする場合があれば、容疑者に事情聴取を要請したり、家宅捜索を行うことになります。検察官役として有罪を立証する責務を負う以上、被疑者が大物議員であろうとも、自宅への家宅捜索を回避する理由にはなりません」 また、刑法が専門の板倉宏・日本大学名誉教授は、「通常の業務を抱える弁護士が検察官として立件を目指す以上、検察を上回る踏み込んだ捜索を行うべき」と話す。 「小沢氏の事件を担当した東京地検特捜部では、複数の選任検事が何時間もかけて膨大な資料や供述を紐解いたにもかかわらず、起訴を断念した。それを超えて小沢氏を追いつめるには、特捜部すら踏み込むことをしなかった私邸への家宅捜索も当然検討されるべき。要員の問題もありますが、本気で有罪に追い込むのなら、(私邸への家宅捜索を)断行する必要もあるでしょう」 一方、慎重な捜査を求める声もある。 『検察審査会の午後』(新潮社)の著者で作家の佐野洋氏は、「検審が手持ちの資料をもとに判断し、指定弁護人も検察に代わって裁判を請け負う以上、同じ条件(=捜査資料)で公判を進めるのがフェア。新たな証拠や供述が出てこないと公判を維持できないのなら、初めから今回の強制起訴はその意味を失っている」と指摘する。 小沢邸の家宅捜索については小沢氏周辺の中にも危惧する声が出ており、側近議員の1人がその可能性について小沢氏に進言したところ、小沢氏は「何もない。何も出ないから困らない」と語ったという。 |
指定弁護士には検察とほぼ同等の強い権限が与えられているが、慣れない活動には、多くの困難が待ち構えている。 指定弁護士は必要があれば、容疑者の逮捕や家宅捜索など強制捜査もできる。だがこれまでの起訴議決事件では、容疑者や関係者への任意の聴取は行われたが、強制捜査はない。 東京第五検察審査会の強制起訴議決は、小沢氏の供述の信用性を否定し、一度目の議決後の検察の再捜査を「形式的」と批判したこともあり、指定弁護士が小沢氏へ再聴取を要請する可能性がある。 |