外務委員長が収賄罪で失職という国会の権威を揺るがしかねない事態

鈴木宗議員の上告棄却 口利き政治と決別せよ中国新聞 2010年9月9日)


受託収賄などの罪に問われた新党大地代表、鈴木宗男衆院議員の上告を最高裁が棄却した。懲役2年の実刑判決が確定し、失職の末に収監される見通しだ。

民主党統一会派を組み、衆院外務委員長の要職にあるだけに、現政権も責任は免れまい。

国会議員が実刑判決を受け、失職するのは戦後4人目である。かつて鈴木議員が属していた自民党も含め、「政治とカネ」への警鐘として厳しく受け止めるべきだ。

最高裁の決定は、一、二審判決をそのまま踏襲している。

自民党政権北海道開発庁長官や官房副長官だった1997〜98年、地元の二つの会社から計1100万円のわいろを受け取った、という事実認定である。北海道開発局からの受注の便宜を図ったり、林野庁へ契約の口利きを頼まれたりした見返りとしている。

特定業者への利益誘導のために役所に働きかけ、お金や選挙の応援によって返してもらう。鈴木議員が問われた罪は、自民の長期政権下で横行した「口利き政治」のあしき例にほかなるまい。

だが鈴木議員は8年前に逮捕された後、一貫して「自分を失脚させるための国策捜査だ」と全面無罪を訴えてきた。

巧みな演説が「ムネオ節」として知られ、北海道で根強い人気がある。保釈後に新党大地を立ち上げて国会に返り咲いた。きのうの記者会見でも「どんな環境にあっても検察権力と闘う」と冤罪(えんざい)を主張したが、国民の納得が得られる言い分とは思えない。

外務委員長が収賄の罪で失職する、という事態は国会の権威を揺るがしかねない。そんな議員をなぜ起用したのか、民主政権の姿勢が何より問われよう。

東京高裁で二審判決が出たのは2008年2月。遠からず最高裁判決が出ることは分かっていたはずである。

なのに政権交代を果たした昨年9月、「刑事被告人は前例がない」とする野党の反対を押し切り、委員長人事を議決した。本人の希望にも沿ったようだ。

民主は昨年の総選挙で、北海道の小選挙区新党大地の支援を得た。その見返りとして、「被告」であることに目をつぶったと言われても仕方あるまい。国会人事に影響力を発揮したのは当時の小沢一郎幹事長ではなかったか。

いま白熱する民主代表選では、小沢氏の政治とカネの問題が争点の一つである。

鈴木議員は、政治資金管理団体をめぐる検察の捜査で窮地に追い込まれた小沢氏を一貫して擁護し、代表選でも支援している。それだけに今回の決定は、代表選びの行方にも微妙な影響を与えるかもしれない。

菅直人首相はきのう記者団に「裁判の具体的な事案にコメントするのは適切ではない」と述べるにとどまった。逃げているような印象を受ける。最高裁の判断を重く受け止め、古い政治体質からどう決別していくかを、国民にきちんと語る必要がある。

外務委員長が収賄の罪で失職という国会の権威を揺るがしかねない事態を起こした民主政権の姿勢って、そんなこと分かりきっているところなのに。 人気ブログランキングへ 鈴木宗男衆議院外務委員長起用問題を見るにはここをクリック