ユーロはどこへ?

ユーロ現金流通10年 祝福気分なし 崩壊の崖っぷち産経新聞 2012年1月2日)


欧州単一通貨ユーロが現金通貨として流通を開始してから1日で丸10年が経過した。ギリシャに端を発した債務危機が続く中、ユーロ圏に記念日を祝福する雰囲気はみられず、各国首脳からは危機深刻化に対する警戒感の表明が相次いだ。「崩壊」の崖っぷちから逃れられるか、ユーロは今年、正念場を迎える。

「危機を克服する道のりはまだ長い。しかし、その行く先ではより強くなった欧州が生まれる」。ドイツのメルケル首相は12月31日、新年向けの演説で債務危機の収束にはまだ時間を要することを認め、その状況は今年、「疑いなくもっと困難になる」と述べた。

メルケル首相と「メルコジ」と呼ばれる連携を続けるフランスのサルコジ大統領も同日、「主権を保ち、(ユーロに委ねた)われわれの運命を制御する唯一の手段は構造改革だ」と述べ、国民に財政改善に向けた痛みへの理解を求めた。

1999年に決済通貨として誕生したユーロだが、実際に紙幣と貨幣を市民が手にしたのは現金流通が始まった2002年1月1日から。当時は大きな歓喜とともに迎えられた。

しかし、越年した債務危機欧州連合(EU)などによる記念行事はなく、「ものさびしい誕生日」(独DPA通信)となった。「今では『ハッピー・ユーロ』の話はできない」(南ドイツ新聞)状況だ。

独メディアによると、ドイツ国民の4人中3人が「ユーロを使う際、今でもときどき旧ドイツ・マルクに換算して考える」と答える世論調査結果も出ており、通貨統合以前への郷愁も根強いようだ。

EUは昨年末、危機対策として英国を除く加盟26カ国が財政規律維持の法制化など盛り込んだ財政協定を結ぶことに合意した。

「通貨は一つだが、財政はバラバラ」との弱点を解消する財政統合の一歩で、フランス銀行(中央銀行)のノワイエ総裁は、実行されれば「ユーロは10年後には世界首位の通貨になるかもしれない」と強調する。

しかし、市場が今、危惧するのは、今年春までに巨額の国債償還を迎えるイタリアやスペインなど重債務国の喫緊の資金繰りだ。

EUが昨年試みた「欧州金融安定化基金」(EFSF)の拡大や国際通貨基金IMF)を通じた重債務国支援など安全網の拡充策は、過剰な負担への国民の反発で各国の足並みがそろわず、当初に描かれた通りにはならなかった。

今年は欧州統合の出発点となった1952年の「欧州石炭鉄鋼共同体」(ECSC)設立から60年の節目でもある。統合の後退を避けるためにも、各国には国民と市場を納得させる団結と実行力が求められる。

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