坂井泉水と大黒摩季

大黒摩季といえば、2007年5月27日に放送されたテレビ番組「ウチくる!?」の発言を思い出す。ビーイング在籍時に歌手デビュー前のバックコーラス時代のことが語られた際に、司会者の中山秀征さんは「バックコーラスができるのは、それだけの力量があるからだ」と大黒さんを持ち上げた後で「レコーディングの時『コイツ』下手クソだなっていうアイドルもいっぱいいたでしょ?」と問い、


はい、ぶっちゃけ、何でアンタの気持ち悪い音程に合わせて私が歌わねばならないのだ! カワイイってことはこういう(バックコーラスではなく前で歌える)ことか! やっぱ顔か〜、体か〜!!みたいな。何で!!(私は前で歌えないの)って感じじゃないですか!

と返しました。その翌日に坂井泉水転落死が報じられたために、大黒発言は坂井泉水批判と受け止められてしまった。番組中にビーイング時代に「TUBE」「B'z」「果てしない夢を(featuring長嶋茂雄)」「GO!GO!貴花田」のコーラスをやっていたことが語られた中で「ZARD」のことが語られなかったこと(厳密に言えば「果てしない夢を」に参加していたZARDのジャケ写は載ってた)も批判に拍車をかけてしまった。中には坂井泉水大黒摩季の発言をテレビで知ったから自殺したというコメントまで出た(実際には「放送前日に転落(意識不明)」・「放送日に死去」だから、テレビの大黒発言を見て自殺という論法は時系列では矛盾するのだが)。

この批判を受けて大黒摩季は件の発言は坂井泉水を指したのではないとコメント。翌月に青山葬儀所で開かれた音楽葬では「常に尊敬すべき憧れのアーティストでした」「私が落ち込んでいるとき『摩季ちゃんといると元気が出るよ、力強い声が大好きよ』とさりげなく励ましてくれ、心遣いの素敵な人でした」「いつも、そういう女性になりたいと思いました」とか言ったな。もっとも、「『やっぱ顔か〜、体か〜!!』というコメントをするようでは、坂井泉水みたいな人に心遣いのできる女性になれないよ」とツッコミたくなったがね(笑)。まあ、あのコメントも大黒さんらしいといえばらしいんだけど、あれではタイミングが悪すぎたね。

坂井泉水大黒摩季ビーイングの二大女性ボーカリストとして比較もされた。不仲説も出たことはあるけれど、1999年にZARDのベスト盤「シングルコレクション」が出た時のオマケででた「ARTIST FILE」では大黒摩季ビーイングから移籍する前)のコメントでは、


泉水ちゃん元気ですかぁ?(笑)
こんな公共の場でしか話せない程、お互い忙しくなって嬉しいですね。(笑)
ZARDのコーラスをやらせて頂いた後、私のボロ車で(当時)イタ飯屋さんに行って、音楽話ししましたよね〜? 覚えてます? 泉水ちゃんの良いメロディーへのこだわりに私はじゃあリズムを極めよう!!なんて無邪気に決心したカワユイ記憶がよみがえります。
私にはないそのクリスタルVOICE☆&ZARD SOUNDはツッパリすぎて気疲れがちな私の心を素直にしてくれます。きっと激動のこの世の中の皆さんも一緒だと思います。
これからも、私の為にも!! いい作品を作り続けて下さい?
P.S.当時のギャラから上がっていませんので(笑)またコーラス呼んで下さいね?
とかあったから、坂井と大黒は少なくとも仕事の外でもある程度の話はできる仲だったのでしょう(私が調べた限り、ビーイング所属の人は人間関係がかなりドライであまりベタベタしないことが多い)。それに、大黒が下積みのコーラス時代を不満に思っていたことは1999年のエッセイ本「ありがとうなんて絶対言わない」でも書かれていたことなので、知っている人から見れば今更という感覚ではあった。

ビーイングの全盛期を支えた二大女性ボーカリスト坂井泉水大黒摩季。二人ってビーイング特有の露出を極めて制限する戦略では同じに見えたけど、それ以外では対照的な面が多かった。歌詞では坂井は自己主張は控えて「あなた」に従う依存型、大黒は仕事や自身満々で耳に痛いことも言う自立型。性質も坂井は柔らかいハスキーボイス、大黒はキンキンするくらいハイトーンボイス。坂井の本名は蒲池幸子なのに対し、大黒の本名は大黒摩紀で読みは同じ。

歌手としてデビューするまでも違いがあった。坂井は実家の神奈川で家族と暮らしながらレースクイーンやカラオケクイーンなどのタレント活動を経て歌手デビュー、大黒は実家の北海道を離れて家族と離れて関東で暮らしながらバックコーラスとはいえ音楽中心に活動をしながら歌手デビュー。

大黒は自分の下積み時代のことを語っていたけど、坂井泉水も下積みはしていたからね。そりゃ、実家から通えてタレント活動をしていた坂井は金銭的にはよかっただろうし、その一方で大黒は一人暮らしでバイトと音楽活動を軸にした活動では金銭的にはきつかったかもしれない。だが、芸能界の下積みという観点では、音楽中心の活動だった大黒よりもバラエティに富んだ(笑)タレント活動をしてて芸能界の底辺にいてドス黒いところを坂井は見てたから、ある意味では大黒よりも坂井の下積みのほうが精神的にキツかったのかもしれない。
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